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土蜘蛛の謎⑩ 蜂となって飛び去った執金剛神 

土蜘蛛の謎⑨ 清蔵、鉢を飛ばす より続きます~

三月堂 百日紅


①不空羂索観音は志貴皇子の本地仏。


File:Todaiji Monaster Fukukensaku Kwannon of Hokkedo (232).jpg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3ATodaiji_Monaster_Fukukensaku_Kwannon_of_Hokkedo_(232).jpg よりお借りしました。

作者 Imperial Japanese Commission to the Panama-Pacific International Exposition


以前の記事、土蜘蛛の謎⑤ 蜘蛛の巣に住む観音 の中で、私は三月堂のご本尊・不空羂索観音について次のように述べた。

「蜘蛛の巣のような光背を背負い、手には羂索を持つ羂索堂の本尊・不空羂索観音
手に持つ羂索を投げる姿を想像すれば、まるで狂言や六斎念仏で演じられる土蜘蛛のようである。
また肩には謀反人のイメージを持つ鹿のケープを身に着けている。
この不空羂索観音はまつろわぬ民・土蜘蛛=志貴皇子の怨霊を封じ込めた像なのではないだろうか。」と。

私は「不空羂索観音とは土蜘蛛=志貴皇子の怨霊封じ込めの仏像ではないか」と述べたが、これは「不空羂索観音は志貴皇子の本地仏ではないか」というのと同じである。

日本では古より神仏を習合して信仰してきたが、そのベースになった考え方として本地垂迹説があった。
本地垂迹説とは「日本古来の神々は仏教のみほとけが衆上を救うために仮にこの世に姿を現したものである。」とする考え方のことで、日本古来の神々のことを権現または化身、仏教のみほとけのことを本地仏といった。
たとえば天照大神の本地仏は大日如来であるとか、菅原道真は十一面観音の化身であるなどとして、神仏は習合されていた。

東向観音寺

東向観音寺 「天満宮御本地佛 十一面観世音菩薩」とは「菅原道真は十一面菩薩の化身である」というような意味です。


②神と怨霊は同義語だった。

十一面観音の化身とされる菅原道真は怨霊としてしられている。
道真は藤原時平の讒言によって大宰府に左遷となり、その数年後、失意のうちに亡くなった。
道真の死後、京では疫病が流行り、天変地異が相次いだ。
そしてこれらは道真の怨霊の仕業であると考えられたのである。

古には神と怨霊は同義語であった、と言われる。
これは「怨霊は神として祀り上げると守護神に転じる」という考え方からくるものだろう。
この考え方は、陰が極まれば陽に転じるとする陰陽道の考え方の影響を受けたものだと考えられる。
怨霊として恐れられていた菅原道真が、現在では学問の神として信仰されているのはそのためである。

③基皇子の死は志貴皇子の怨霊の仕業?

土蜘蛛の謎⑤ 蜘蛛の巣に住む観音 で述べたように、志貴皇子は715年に暗殺されて1年近くその死が伏せられていたと考えられる。
727年、聖武天皇と光明皇后の間に生まれた基皇子は生後1年足らずで夭逝した。
聖武天皇と光明皇后は基皇子の菩提を弔うために金鐘寺を創建した。
聖武天皇と光明皇后は基皇子の死を志貴皇子の怨霊の仕業であると考えたのではないだろうか。
そこで怨霊である志貴皇子を神として祀り上げ、さらに神仏習合で志貴皇子をみほとけの姿に転じたのが不空羂索観音ではないかと私は思う。

④土蜘蛛は陰、不空羂索観音は土蜘蛛を陽に転じたみほとけ?

狂言や六斎念仏の土蜘蛛は、糸をまき散らして相手をがんじがらめにする。
一方、不空羂索観音は手に持った羂索で人々を救うとされている。
蜘蛛の糸と羂索はよく似ているが、蜘蛛の糸は人を捕える罠、羂索は人を救うありがたいものということで、全く性質が異なっている。
蜘蛛の糸は陰、羂索は陽。
土蜘蛛は陰で不空羂索観音は土蜘蛛を陽に転じたものだと思うのだ。

千本閻魔堂狂言 土蜘蛛

千本閻魔堂狂言 頼光と土蜘蛛


⑤蜂=鉢=髑髏という謎々


この不空羂索観音の後ろの厨子に秘仏の執金剛神(しゅこんごうじん)が安置されている。
この執金剛神には次のような伝説がある。

940年、平将門の乱がおこったとき、執金剛神の前で将門誅討の祈祷を行った。
すると執金剛神の髻が大きな蜂となって東方へ飛びさり乱を平定した。
そのため、執金剛神には髻の元結紐の端が決失している。


執金剛神の髻は蜂になったというが、これは蜂=鉢=頭(ドクロ/頭のことを鉢ということがある。)という謎々ではないか。

File:Vajirapani Shukongoshin Todaiji.JPG

執金剛神 https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/da/Vajirapani_Shukongoshin_Todaiji.JPG よりお借りしました。
作者 The Institute of Art Research Tokyo [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で

⑥飛ぶドクロ伝説


蘇我入鹿や玄昉の首が飛んだという伝説がある。

土蜘蛛の謎② 土蜘蛛とは首のない人間のことだった? で述べたように、土蜘蛛とは謀反の罪で斬首された人の首のことだと私は考える。
蘇我入鹿や玄昉は土蜘蛛であったのだ。

多武峰縁起絵巻 複製(談山神社) 
多武峰縁起絵巻 複製(談山神社)刀を持っているのが中大兄皇子、首を斬られているのが蘇我入鹿。

髻が蜂=鉢=頭(どくろ)になって東方へ飛び去ったという執金剛神もまた土蜘蛛だということになる。

不空羂索観音とちがい、執金剛神の姿には土蜘蛛のイメージはないが、蜂=鉢=髑髏が飛んだという伝説が執金剛神とは土蜘蛛であることを物語っている。

おそらく執金剛神が志貴皇子の怨霊封じ込めの仏像なのだろう。
執金剛神が秘仏とされ厨子の中におさめられているのは、志貴皇子の怨霊が外に出て暴れないようにするためだと思う。
伝説では執金剛神の髻が蜂になったとし、執金剛神そのものが厨子の中から出て蜂になったとはしていない点に注意したい。

将門の首塚

東京都千代田区にある将門の首塚 京から飛びかえった将門の髑髏がここに落ちたという。


●土蜘蛛をもって土蜘蛛を制す

そして執金剛神が平定した平将門の乱の首謀者、平将門もまたその首が飛んだという伝説がある。
平将門もまた、土蜘蛛であったのだ。

つまり執金剛神=志貴皇子という土蜘蛛が、平将門という土蜘蛛を退治したということである。
毒をもって毒を制すというが、土蜘蛛をもって土蜘蛛を制したわけだ。
土蜘蛛を制するためには土蜘蛛を、怨霊を制するためには怨霊を用いるべしというような信仰があったのだろう。

五箇山 上梨 村上家 鬼門除け

五箇山 村上家住宅に展示されていた鬼門除け 小さな髑髏でした。(猿の髑髏?)
※東大寺・・・奈良市雑司町


土蜘蛛の謎⑪ なぜ将門の首塚には蝦蟇が供えられているのか。 へつづきます
トップページはこちら→土蜘蛛の謎① 亀石伝説(追記あり)


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[2017/03/15 21:30] 土蜘蛛の謎 | トラックバック(-) | コメント(-)