ピンク色の文字部分は、すべて著書「シドモア日本紀行 明治の人力車ツアー /エリザ・E・シドモア 外崎克久 訳 講談社学術文庫」よりの引用です。
❹サンジロウ
p81
鉄道駅では、いつも人力車の一団が乗客をまっています。その中に、踵に翼をもった日本版マーキュリー[ローマ神話の神]、サンジロウ[三次郎?]がいて、サムライ時代の頭の剃上げ[月代]と銃の撃鉄[髷]を付けています。彼の電気には日本政府役人に従って欧州旅行をした話が出てきます。東京に戻った彼は、再び人力車の梶棒を取り、地元ニュースとゴシップ記事の発信源になりました。
マーキュリーといっても、クイーンのフレディ・マーキュリーのことではないw
マーキュリーはメルクリウスともいい、ギリシャの神々の使者であった。
使者としての役割を果たすことで、自分の欲しいものを手に入れることから商売の神として信仰され
また、赤ん坊のときに牛を盗みんだことから泥棒の神、
牛を盗んだことを尋問されたとき「赤ちゃんの僕にできるはずがない」といったことから、嘘つきの神
人を眠らせたり起こしたりすることができる魔法の杖を持っていることから、人を生き返らせたり、冥界に導いたりする神としても信仰され、さらに旅行の神へと神格を広げた。
なんとも人間らしい神様であるが、それだけに親近感がわく。
私もサンジロウさんが牽く人力車に乗った気分になって、東京の仮想旅を続けよう。
❺増上寺 ・台徳院霊廟
p82
そんなある日、仏像のように物思いにふけり、茶をちびちび啜り、仮名火鉢の周りでキセルをプーッと吹いたりしていた僧侶の集団が急に沈黙をやめ一斉に動きました。久しぶりに参観者がやってきたのです。彼らは理にかなう満足な報酬獲得の喜びに興奮のさざ波を立てて訪問者を迎え、例のごとく微に入り細にわたり説明しながら祭壇、天井、宝石のちりばめた壁面を見せて回りました。
シドモアは僧侶たちについて、少し意地悪な書き方をしているw
1874(明治)7年元旦に増上寺の大殿は廃物主義者の放火のよって消失したそうである。
シドモアの日本紀行は、1884(明治17)年から1902(明治35年)の記録なので、放火事件があったのちに、訪れたのだろうが、1874年の放火については記していない。
p83
丘の頂きの五重塔近くには湾や富士のけいかんが楽しめる場所があり、そこの快活な一家の経営する建て場では、参観者に望遠鏡を貸したり、桜茶をサービスしたりします。
残念ながら太平洋戦争中の空襲によって徳川家霊廟、五重塔などが消失したそうである。
五重塔が建っていたと考えられているのは、芝公園の丸山古墳付近であると、下記サイトには記されている。
こちらの絵にも丸山古墳あたり(写真向かって左上あたり)に五重塔が描かれている。

境内の鳥瞰図(1901年(明治34年))
五重塔付近を拡大してみてみよう。

歌川広重「名所江戸百景」増上寺塔赤羽根
現在の増上寺には五重塔はないが、大殿の背後にシドモアが嘆きそうな(w)東京タワーが建っている。
p83
厳粛な巨木群を背景にした芝の静寂、深い陰影と緑色の黄昏、数百基の石灯籠、聖なる蓮池、龍神の守る楼門の連続、そして極彩色の豪華な彫刻壁面は美しい絵画として記憶に残ります。
このようにシドモアは記しているが、私が増上寺を訪れたとき、「龍神の守る楼門の連続」「極彩色の豪華な彫刻壁面」などは全て失われて存在していなかった。
増上寺 有章院霊廟 鐘楼及び勅額門(戦災で焼失)
増上寺 文昭院殿霊廟 拝殿内部 (戦災で焼失)
東京タワーより増上寺を望む。
『江戸図屏風』に描かれた台徳院霊廟
奥院宝塔は覆屋内(八角堂)に安置されているので、シドモアが
「その堂には家康の子息・二代将軍秀忠の位牌を入れた見事な漆金箔円筒が安置され」といっているのは、下の宝塔の事だと思う。
位牌とは「死者の戒名や法名、法号などを記した木の板」のことである。
宝塔のことを位牌というのかどうかはわからない。
台徳院 奥院宝塔(焼失)
台徳院霊廟惣門
台徳院霊廟惣門は現存しているが、うっかり写真を撮り損ねたので、
Photo ACさんよりおかりした。
(ありがとうございます。)
増上寺 三解脱門
元和8年(1622年)に建立された三解脱門は戦災を免れた。
シドモアが見たものと同じだ。
❻愛宕神社
p83~p84
芝の巨大な山門[三解脱門]を抜け、愛宕山へ向けて疾走。そこには緑深き険しい山頂へ向かって幅広い連続する直線階段の男坂や、緩く中途半端な傾斜で曲がる一本道の女坂があり、私たちは各自参道を選んで可愛らしい神社にたどりつきました。
~略~
また、そこからは、今いた芝一体が鳥瞰図の浮彫のようにくっきり見晴らせ、なかなかの絶景です。
この動画はとても素晴らしいので、オススメである。
2:01あたりでふたつの階段がでてくる。
むかって左が男坂、向かって右が女坂だろう。
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