トンデモもののけ辞典95 夜泣き石『石神はいかにして夜泣き石になったか』
竜斎閑人正澄画『狂歌百物語』より「夜鳴石」
①夜泣き石
夜泣き石(よなきいし)は、石にまつわる日本の伝説の一つ。各地にさまざまな夜泣き石が存在する。
大別すると、泣き声がする、子どもの夜泣きが収まるとの伝説に分かれる。中でも静岡県の小夜の中山夜泣き石がよく知られているが、日本各地に存在する夜泣き石の中には、小夜の中山のように殺された者の霊が乗り移って泣き声をあげるといわれるほか、石自体が怪音を出すといわれるものも多い[1]。
⓶石神=ミシャクジ様(御石神様)=咳の神(石と咳はどちらもセキと発音する。)
夜泣き石のように、石が声を発したり人を化かしたという伝承は各地にある。岡山県苫田郡泉村箱(後の奥津町、現・鏡野町)の「杓子岩」(しゃくしいわ)は、夜に通行人に対して「味噌をくれ」と言って杓子を突き出したという。
とあるのが興味深い。
石の神と、杓子には関係がありそうに思うからだ。
大阪の四天王寺に石神堂がある。牛玉尊と書かれており、牛玉尊(牛頭天王のことか?)を祀っているものと思われる。
おなじ四天王寺に「咳の地蔵尊」がある。
私はこの「咳の地蔵尊」と石神堂の「牛玉尊」は同体ではないかと思う。
というのは、咳(せき)と石(せき)の発音が同じだからである。
神は語呂合わせで神格を広げることがある。
例えば柿本人麻呂は人丸とも呼ばれ、火止まる(ひとまる)で防火の神へ、人産まる(ひとうまる)で安産の神へと神格を広げている。
またミシャグジ様という神が信仰されており、ミシャグジ様とは御石神様が訛ったものだとする説があるのだが
横浜市の社宮司社では、ミシャクジ様を咳を治してくれる神として信仰している。
横浜市の社宮司社では、ミシャクジ様を咳を治してくれる神として信仰している。
古より磐座に対する信仰が存在していたことを考えると
おそらく石神がもともとの神格であったのが、語呂合わせから咳の神へと転じたのだろう。
つまり、石神=ミシャクジ様(御石神様)=咳の神(石と咳の音が同じ)ということである。
③ミシャグジ様と杓子
そして、ミシャグジ様は発音が杓子(しゃくし)に通じるところから、しゃくし(しゃもじ)を奉納する習慣がある。
上の記事には、四天王寺で無病息災杓子を授与していると記されている。
節分に四天王寺で「天王寺かぶら汁」を授与する企画があり、その際の記念品として杓子を配布したと書いてある。
これを読むと、杓子授与は最近になって始められたもので、もともと四天王寺と杓子には関係がないように思えるかもしれない。
しかしそうとも言い切れない。
四天王寺の西に一心寺という寺があり、四天王寺の別当・慈円の要請をうけて法然が草庵を結んだのが創建とされる。
一心寺は四天王寺と関係の深いお寺なのだ。
一心寺は四天王寺と関係の深いお寺なのだ。
その一心寺に本多忠朝の墓があり、酒断ちの神として信仰されており、杓子を奉納する習慣があるのだ。
③ミシャグジ様は勘の虫の神
ミシャクジ様について、次のような内容の書き込みを見つけた。
ミシャクジ様は漢字で書くと御石神様。
ここからも元々は石の精霊であることが伺えますね。
後に疳の虫とつながりがあるとも言われ
ミシャクジ様の近くにはさみの絵を描いた紙を
お供えするという風習もあるそうですよ。
昔は疳の虫を切る儀式をハリガネムシで代用したと
聞いたこともありますね。
この期におよんでまたハリガネムシかい(笑)
ミシャグジ様と疳の虫を切る儀式との関係については明確に記されていないが、
ミシャグジ様にはさみの絵をお供えする習慣があったということは、ミシャクジ様は疳の虫を切ってくださる神様だという信仰があったのだろう。
そしてハリガネムシ(針金のような形をした虫)を疳の虫に喩え、これをはさみで切る儀式をミシャクジ様の前で行ったということではないかと思う。
④ミシャグジ様に奉納する杓子をひっくり返せば燗をする徳利の形に
なぜミシャグジさまは疳の虫治癒にも霊験があると考えられたのだろうか。
ミシャグジ様は杓子(シャクシ/しゃもじ)の音に通じるため、杓子を奉納する習慣がある。
滋賀県の多賀大社にはしゃもじを奉納する習慣があるが、多賀大社もミシャグジ様と関係があるのだろう。
胡宮神社には青龍山山頂に胡宮の磐座(いわくら)があり、多賀大社の奥の院と呼ばれている。
磐座の神は石神である。
多賀大社前にある多賀屋さんの看板は多賀大社に奉納するしゃもじを象ったものである。
このしゃもじをひっくり返すとお燗(かん)の徳利のような形になる。
それで、燗→疳の虫となったのかも?
疳の虫とは赤ちゃんの夜泣き、かんしゃく、ひきつけなどのことをいい、
それらは赤ん坊が疳の虫に犯されることでひきおこされていた。
それらは赤ん坊が疳の虫に犯されることでひきおこされていた。
ミシャグジ様(御石神様)→咳の神(石と咳はどちらもセキとよむ)
杓子の神(ミシャグジとシャクシは音が似ている)→燗の神(杓子と形が似ている)→疳の虫の神→夜泣きの神
このようにして石の神は夜泣きの神となり、石が夜泣きするなどと考えられて妖怪・夜泣き石は生み出されたのではないだろうか。
壬生寺 夜泣き地蔵(おせき地蔵)
壬生寺に「夜泣き地蔵」と呼ばれる石仏がある。
壬生寺に「夜泣き地蔵」と呼ばれる石仏がある。
「夜泣き地蔵」は「おせき地蔵」とも呼ばれている。
「おせき地蔵」とは「お石地蔵」という意味だと思う。
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