トンデモもののけ辞典52 イクチ
1⃣妖怪イクチ
『譚海』によれば常陸国(現・茨城県)の沖にいた怪魚とされ、船を見つけると接近し、船をまたいで通過してゆくが、体長が2キロメートルにも及ぶため、通過するのに12刻(3時間弱)もかかる。体表からは粘着質の油が染み出しており、船をまたぐ際にこの油を大量に船上にこぼして行くので、船乗りはこれを汲み取らないと船が沈没してしまうとある[1]。
『耳袋』ではいくじの名で述べられており、西海から南海(近畿地方、九州)にかけて時折現れ、船の舳先などにかかるものとされている。ウナギのように非常に長いもので、船を通過するのに2,3日もかかるとあり、「いくじなき」という俗諺はこれが由来とされている。また同書では、ある人物が「豆州八丈(現・東京都八丈島)の海に、いくじの小さいものと思われるものがいるが、それは輪になるウナギ状のもので、目や口がなく動いているものなので、船の舳先へかかるものも、長く伸びて動くのではなく、丸くなって回るものだ」と語ったという。
2⃣五浦海岸にはかつて巨大な油ガス田があった?
私は「常陸国」「体表からは粘着質の油が染み出しており」とあるのに注目した。
私的に、常陸国といえば油田だ。
2020(令和2)年、北海道大学と茨城大学の研究チームが驚くべき成果を発表。五浦海岸にはかつて巨大な油ガス田があったというのです。
~略~
炭酸塩コンクリーションを構成するほとんどの炭素が、地下深部の熱によって生成した天然(メタン)ガスに由来していることを明らかにしました。約2000万〜1500万年前、日本列島が大陸から分離したとき、激しい地殻変動によって海底深くにあった油・ガス田に亀裂が入り、数万年にわたって天然ガスが断続的に漏れ出していたのだとされます。しかも、五浦海岸沖には今も油ガス田が存在する可能性があるのです。
上の地図の六角堂と書いてあるあたりが五浦海岸である。
海岸に巨大な油田があるのであれば、それが海に流れ出すということがおこりそうである。
3⃣イクチの正体は海洋に流出した原油?
リンク先の海洋汚染の写真を見てほしい。
原油が筋になって海上に浮かんでいるような写真もある。
原油が筋になって海上に浮かんでいるような写真もある。
鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より「あやかし」の名で描かれたイクチ
上記、鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』の「あやかし」の名で描かれたイクチは、この海上に浮かんだ筋状の油を妖怪化したものではないだろうか。
「船をまたぐ際にこの油を大量に船上にこぼして行く」というのは、油を含んだ波が船にかかる、ということではないか。
4⃣「いくじなき」と言う俗諺は「イクチ」からくる?
なぜ妖怪は名前を「イクチ」というのか。
ウィキペディアには
『ウナギのように非常に長いもので、船を通過するのに2,3日もかかるとあり、「いくじなき」という俗諺はこれが由来とされている。』
『ウナギのように非常に長いもので、船を通過するのに2,3日もかかるとあり、「いくじなき」という俗諺はこれが由来とされている。』
と記されているが、
「いくじなき」をぐぐってみると「意気地無」しかでてこない。
① 気力がなく役にたたないこと。困難や苦労に打ちかつ力強さがないこと。また、そういう人。
~略~
② しまりがなく、ぐうたらなこと。また、そういう人。
なんで「ウナギのような長いものが船を通過するのに2,3日もかかる」ものを「意気地無」というのか、さっぱりわからない。
もしかしたら、古にはそういう俗諺があったのかもしれないが、どうもこじつけの様に思えるw
5⃣イクチは油口?
ぺらぺらしゃべることを「油口(あぶらくち)」というが、「ゆくち」とはいわないだろうか。
名字には油口と書いて「「ゆくち」とよむ人がいるようだが。
名字には油口と書いて「「ゆくち」とよむ人がいるようだが。
「ゆくち」が訛ると「いくち」になりそうに思える。
というのは、こじつけっぽいかなw
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