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トンデモもののけ辞典51 小豆はかり 追記あり


1⃣妖怪・小豆はかり

『怪談老の杖』では、以下のように語られている。
その昔ある男が、麻布に住む友人の家に妖怪が出没するという話を聞いた。男は「ぜひ見たい」と言い、友人の家に泊まらせてもらった。
前述の特徴の通り部屋を静かにしていると、天井裏を踏み歩くような大きな音がし、続いてあの小豆をまくような音が聞こえてきた。音は次第に大きくなり、挙句にはその音は、一斗(約18リットル)の小豆をまくかのような大きさになった。
やがて、天井裏ではなく家の外の庭から、下駄を鳴らす音や、水をまくような音がしてきた。男はすかさず障子を開けたが、庭には誰の姿もなかったという。
この妖怪は天井から土や紙くずを落とすこともあるものの、特に悪事は働かないものなのだという。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E8%B1%86%E3%81%AF%E3%81%8B%E3%82%8A より引用

2⃣小豆をまく音は波の音?

「妖怪・小豆はかり」は音だけを立てて、姿が見えないらしい。
そこでまず小豆の音を聴いてみた。


上の動画はざるにいれた小豆を揺らす音であって、小豆をまく音とは多少違うかもしれないが、波が打ち寄せる音のように聞こえる。

「小豆はかり」が現れるのは麻布だという。
東京都港区で、海にちかい。
もしかして、「小豆はかり」の正体は、波の音で、波の音が、小豆を撒く音に似ているところからその名前がついたのだろうか?

と一瞬考えたが、さらに調べていくと、どうやらそうではないらしいと思えてきた。



3⃣麻布の地名の由来


私は「あざふ」と「あずき」の音が少し似ていると思った。
そこで麻布(あざふ)の地名の由来を調べてみた。


すると、次のような記事が見つかった。


”麻の産地であり又織物もさかんであった。”というのが定説なのだろうが、江戸時代位までは、 阿佐布、麻生、浅府、安座部、などと多様に書き表されていた。
http://deepazabu.net/m1/asap/asap.html より引用


記事には、アイヌ語のアサップルが語源ではないか、とする説も記されていて興味深いが、定説ではかつて「麻の産地」だったということになっているようだ。


追記/麻の産地説もありえるとは思うが、いつごろの話で、誰が織物を生産していたのかなど、全く不明であり
定説だというだけで、正しいとすることはできない。



4⃣「あず」「あさぶ」は崖を意味する言葉


3⃣でご紹介した記事には、小豆はでてこない。
そこでさらに調べると、


「あざぶ」は「あさふ」でもあり、口語では「あそう」ということになり「麻生」という表記にもなっている。 
茨城県行方市麻生の隣には台地の崖を意味する「粗毛(ほぼけ)」という地名があるが、同じく麻生は「あぞ・ふ」で、崖地の場所を表している。東京港区の麻布も、台地の縁にある崖地の意味だ。

https://baba72885.exblog.jp/15534522/ より引用


「あさふ」「あそう」は崖という意味もあるようである。


さらに、知恵袋にこのような質問と回答もあった。


質問者/山用語で、小豆と言うのも怖い土地を表すのですか。
麻布、麻生が崖で、小豆も地盤の弱い崩落する危険があるところなのですか。



ベストアンサー/あず、あるいは、あづ
は土砂災害の多い場所をあらわすらしいです。


質問者/梓とか、小豆島とか。
軟弱な地盤なのでしょうね。


https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12176225292?fr=sc_scdd&__ysp=5bCP6LGGIOm6u%2BW4gw%3D%3D  より引用


あず【坍】〘名〙 くずれた岸。がけ。がけのくずれてあぶない所。
※万葉(8C後)一四・三五三九「安受(アズ)の上に駒をつなぎて危(あや)ほかど人妻子ろを息にわがする」https://kotobank.jp/word/%E5%9D%8D-2002019 より引用


どうやら「あず」出てくるという言葉は万葉集にもでてくる古い言葉のようである。


崩崖
読み方:アズ(azu)
くずれた岸
https://www.cgr.mlit.go.jp/ootagawa/chiebukuro/search/mame/No_233.html より引用


5⃣妖怪・小豆ばかり、正体をあらわす。


どうやら、妖怪「小豆はかり」の正体だけでなく、「麻生」の地名の由来も見えてきたようである。


「麻布」の地名の由来は、
https://baba72885.exblog.jp/15534522/ 
この記事にあるように、「崖」からくるのだろう。


そして、麻布の崖の上にある家に現れる「小豆はかり」は、崩れた崖の妖怪だろう。
「天井裏を踏み歩くような大きな音」「小豆をまくような音」「下駄を鳴らす音」「水をまくような音」は崖が崩れる音なのだろう。


「天井から土や紙くずを落とす」のも崖崩れに伴うものだろう。


物語ではそれ以上の被害はなかったようで、なによりであるw


「小豆はかり」の「はかり」は「ばかり」と言う意味だろうか。
「ばかり」は「場所を表す言葉のあとについて、おおよその場所」を示す。
あるいは「計り」という意味かもしれない。
これについてはよくわからない。


追記/私は麻布に行ったことがなく、地形などよくわからなかったのだが、知人より、よい記事を教えてもらった。
この記事に掲載されている写真を見ると、坂が多く、凹凸のある地形であることがわかる。
崖状になっている地形についても述べられている。


麻布十番をはじめとした東京都心部の「山の手」と呼ばれるエリアは、台地と谷間が絡み合った複雑な凸凹地形の上にある。

~略~

閑静な住宅地は仙台坂から東に向かって緩やかな斜面となっており、崖状に落ち込む。崖下の建物の4階部分に相当する高さなので、10m程度の比高があることになる。明治初期の地図を調べてみたが、当時からこの土地は崖で隔てられていたようで、崖下には池も存在していたことが古地図から見て取れる。

https://suumo.jp/town/entry/azabujuban-norihisa.minagawa/より引用



この記事にも
【「麻布」は、当時周辺に住んでいた農民が、麻の布をつくっていたのが由来だとか。】
と書いてあるが、定説を書いただけのようで、いつごろ、誰が麻の布をつくっていたのかについては記されていない。


「今昔散歩重ね地図」を使って作成した江戸末期の凸凹地図も掲載されているが、ここに麻畑や織物工房のようなものも見つからない。


たぶん、先ほども紹介した↓この記事を参考にして書いただけで、詳しいことがわかっているわけではなさそうだ。
http://deepazabu.net/m1/asap/asap.html


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