とんでももののけ辞典⑬ 天狗
鞍馬駅前の天狗像
①天狗は流星を神格化したもの?
天狗という言葉は中国から伝わった言葉のようである。
というのは、紀元前92~89年ごろ成立した中国の『史記』においてすでに天狗という言葉が登場しているからである。
漢代(25年~220年)に成立した『漢書』や、648年に成立した『晋書』にも天狗は登場する。
流星のうち、火球と呼ばれる大きな流星では、星が流れる際に音を発するらしい。
2020年11月29日、西日本で観測されたものである。
古代の日本では舒明天皇九年(637年)の記事に次のような記述がある。
大きな星が東から西に流れ、雷に似た音がした。
僧旻は 「あれは流星ではなく天狗(アマツキツネ)だ」 と言った。
⓶天の犬が日月を食って日食・月食がおこる。
中国には「天狗食日食月信仰」なるものがあるそうである。
それは次のような内容である。
日神と月神が、人間の起死回生の薬を盗んだので、人々は犬に日と月と追いかけさせた。
日神と月神は薬を飲んでいたので、犬が噛んでも死なないが、犬は追いかけて日月を食う。
そのため日食・月食がおこる。(紅河イ族辞典)
つまり、犬=流星が日月を食べるのが原因で日食・月食がおこるということだろう。
③駆け抜ける獅子頭はハレー彗星を意味している?
⓶の話を聞いて、私は大阪府豊中市・原田神社の獅子神事を思い出した。
上の男性が手にもっているのは獅子舞などに用いられる獅子頭である。
獅子神事を見たのはかなり以前なので、記憶間違いがあるかもしれないが、だいたい次のようなものだった。
手に提灯を持った氏子さんたちが横に並んで向かい合い、道筋を作る。
氏子さんたちが「うおー」と低いうなり声をあげる中、道筋の真ん中を、獅子頭を頭上にかかげた袴姿の青年が物凄いスピードで駆け抜けていく。
氏子さんたちは次々に場所を変えて道筋をつくり、獅子頭は複数人の青年に手渡され、いく筋もの道を駆け抜けていった。
私はこれを、天を駆け抜けるハレー彗星だと思った。
というのは、この獅子神事の起原は684年だといわれるが、この年の10月2日に日本でハレー彗星が観測されたとされるのだ。
そして、その後の11月29日、20時から21時ごろ、太平洋沿岸にマグニチュード8クラスの大地震が起きた。(白鳳地震・天武地震)
山崩れ、河涌き(液状化現象?)、多くの建物が倒壊し、道後温泉や南紀白浜温泉は土砂に埋もれて湧出が止まった。
土佐は津波に飲み込まれて田畑約12km2が海中に没し、調を運ぶ船が多数流失するという大参事。
2011年の東日本大震災を思わせるような大災害だ。
天武年間にはこのほかにも16回も地震がおきている。
ハレー彗星はこれらの災害の予兆だと考えられたことだろう。
狛犬の角がないもののことを獅子という。
赤山禅院 獅子 (狛犬)
青年たちが持って走る獅子頭は犬だといってもいいのではないだろうか。
ハレー彗星は彗星であって流れ星ではないが、天を駆ける星という点では同じである。
④ニギハヤヒが乗ってきた天の磐船は流星だった?
初代神武天皇が日向から東征の旅に出立する際、シオツチノオジが「東にはニギハヤヒがすでに天の磐船を操って天下っている」と発言している。
天の磐船とは何だろうか?
それはUFOではないかという人もいるが、さすがにUFOは無いと思うw
ニギハヤヒが天の磐船を操って天下ったという場所が大阪府交野市の磐船神社で、境内には天の磐船という巨石もある。
磐船神社 天の磐船
雲陽誌という書物に次のような内容が記されている。
島根県松江市の松崎神社では延宝7年に石が掘り出され、古語『星隕って石となる』から神・ニギハヤヒ(物部氏の祖神)の石として宝物にした。ニギハヤヒは星の神である。
どうやら昔の人は、大きな石を空から落ちてきた星だと考えていたらしい。
つまり、天の磐船は空から落ちてきた流星であり、天の磐船に乗って天下ったニギハヤヒは星の神ということになる。
つまり、天の磐船は空から落ちてきた流星であり、天の磐船に乗って天下ったニギハヤヒは星の神ということになる。
⑤なぜ天狗の鼻は長いのか
天狗のもともとの形は嘴のある烏天狗であったらしい。
鼻の高い天狗は、近代に入ってから主流となったとものであると、 村上健司編著『妖怪事典』には記されているようだ。
天狗の鼻が高いのは、天狗がユダヤ人の顔だからだという説がある。
天狗は修験道の山伏の恰好をしているのだが、山伏は頭に頭襟(ときん)と言われる箱のようなものをつけている。
宝山寺 山伏
一方、ユダヤ人は神に祈るときテフィリンと呼ばれる箱のようなものをつける。
他にもユダヤと日本には様々な類似点があり、日ユ道祖論というものが唱えられている。
この日ユ道祖論をベースとして
天狗の鼻が高いのは天狗がユダヤ人だから、などと言われているのだ。
それはありえるかもしれないが、↓ この絵を見て、私は天狗の鼻が長いのは大聖歓喜天の影響があるのかも?と思った。
歌川国芳筆。 大聖歓喜天(聖天)
歓喜天は象頭の男女が抱き合う姿をしており、「子孫の七代までの福を一代にとる」といわれるほど、霊験あらたかなみほとけとして信仰されていた。
この歓喜天の象頭の影響を受けて、歓喜天は象のように長い鼻にされたのかもしれない。
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