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トンデモもののけ辞典⑪ ダイダラボッチ


①「もののけ姫」に登場するデイダラボッチ

ジブリのアニメ「もののけ姫」にシシ神なる神が登場する。
頭には鹿の角のようなものが生えている。

「シシ神」というネーミングの意味は、宮崎駿監督に聞いてみるしかないが、想像するに「獅子神」という意味ではないかと思う。

東北地方に「獅子踊り」という伝統芸能があるが、頭にかぶる獅子頭はいわゆる獅子を象ったものもあるが、鹿の角がついたものもあるからだ。

古には「獅子」とは獣全般を指す言葉であったそうである。

この「シシ神」は神の昼の姿で、夜になるとデイダラボッチという巨大な妖怪に変化する。


上記サイトのイラストではわかりにくいが、このデイダラボッチは巨人で二つの目をもっている。

ウィキペディア「ダイダラボッチ」の項目には妖怪ダイダラボッチの別名としてデイダラボッチとあるので
「もののけ姫」に登場するデイダラボッチは、古より日本に伝わるダイダラボッチをベースに創作したものだと考えてよさそうである。

⓶風土記の巨人や大入道はダイダラボッチとはいいきれないのでは?

ウィキペディアにはふたつの「ダイダラボッチ」の文献が紹介されている。要約すると次のような内容である。

常陸国風土記・・・大櫛之岡(おおくしのおか)にいたという長大な人
         長大な体。
         岡の上から手を伸ばして海浜のハマグリを掘り起こす。
         巨人が食べた貝殻は積って丘になった。
         巨人の足跡は、長さ40歩あまり、幅20歩あまり。尿の穴は直径20歩あまり。

播磨国風土記・・・播磨国の託賀郡(たかのこおり)に大人がいた。
         大人は南海から北海へ到り、東を巡ってこの地にやってきた時、
        「他の地は天が低くて常に屈んで歩いていたが、この地は天が高くてまっすぐ立って歩ける」と言った。

これらの巨人はダイダラボッチまたはそれに似たような名称がついていない。
ウィキペディアの記事を書いた人には申し訳ないが、風土記は巨人について記しているが、ダイダラボッチではないかもしれない。

ウィキペディアにはダイダラボッチの伝承も記しているが、ダイダラボッチと確認できない巨人の伝承もまざっていそうである。

また、ダイダラボッチのページに次の画像がはられている。

大入道

タイトルは
勝川春章・勝川春英画『怪談百鬼図会』より「大入道」、「ダイダラボッチのイメージに近いものと考えられている」と説明文がある。

ここでもタイトルは「大入道」であり、「ダイダラボッチ」ではないことに注意したい。

③一つ目の巨人・ダイダラボッチ

ウィキペディアには各地の伝承が記されているが、ダイダラボッチなどの名称がないものは
ダイダラボッチという名前の妖怪ではなく、別の巨人について記したものかもしれないので注意が必要と思う。

それはともかく、ウィキペディア・ダイダラボッチ・各地の伝承のところに、「三重県志摩郡の大王町はダイダラボッチに由来する地名である」と記されている。
この大王町のダイダラボッチと関係すると思われる「ダンダラボッチ」というアニメーションを「まんが日本昔ばなし」で見たことがある。

以下は「まんが日本昔ばなし」の「ダンダラボッチ」の内容である。

三重県の名切という漁村の沖合にある大王島に一つ目の巨人・ダンダラボッチが住んでおり
島から海をひとまたぎして岩場を伝ってやってくる。
ダンダラボッチがやってくると、人々は岩陰などに隠れた。
猟師がとってきた魚は船ごと、米は蔵ごともっていってしまう。
抵抗すると泣きながら怒って大暴れし、田畑を荒す。家をつぶす。
くるたびに津波のような大騒ぎになる。
晴れた春の日、ダンダラボッチがまたやってきたが、「おまえより大きな巨人がくる」といって
大きな草鞋をみせて脅したところ
ダンダラボッチは怯えて大王島に戻り、二度と現れなかった。

三重県志摩市波切のわらじ祭はこれにちなむものだと思う。

 

ここにでてくる「ダンダラボッチ」は一つ目である。
ダイダラボッチとはただの巨人ではなく、一つ目の巨人のことなのではないだろうか?

④ダイダラボッチは大踏鞴法師?

ウィキペディアには次の様にも記されている。

柳田國男が「ダイダラ坊の足跡」(1927年(昭和2年)4月、『中央公論』)で日本各地から集めたダイダラボッチ伝説を考察しており、ダイダラボッチは「大人(おおひと)」を意味する「大太郎」に法師を付加した「大太郎法師」で、一寸法師の反対の意味であるとしている。


しかし、私はダイダラボッチとは「大きな踏鞴(たたら)の法師」、大踏鞴法師という意味ではないかと考えている。

踏鞴とはたたら製鉄に使うふいごのことである。

たたら製鉄における踏み鞴による送風作業(『日本山海名物図会』所載)。

たたら製鉄における踏み鞴による送風作業(『日本山海名物図会』所載)

たたら製鉄は砂鉄や鉄鉱石を溶かすため、炉に木炭をいれて燃焼させるのだが、木炭を燃焼させるためには空気が必用である。
その空気を送り込む装置が踏鞴である。

大踏鞴法師とは「大きな踏鞴の神」、「たたら製鉄」の神という意味である。
たたら製鉄では片目をつぶって火を見るため、片目を失明することが多かったそうである。
天津麻羅という鍛冶の神がいるが、麻羅とは目占の意味で、一つ目の神だと考えられている。

「もののけ姫」ではデイダラボッチはタタラ場(たたら製鉄をする場所)に現れるので
「もののけ姫」の宮崎駿監督もデイダラボッチとは踏鞴の神だという認識を持っておられるのかもしれない。

しかし「もののけ姫」に登場するデイダラボッチは、私が考えるダイダラボッチとは少しイメージが違っていた。
(もちろん物語なのでどんな姿のダイダラボッチであっても全然構わないし、デイダラボッチはダイダラボッチとは別の神という想定かもしれないのだが)
やはり踏鞴の神なのであれば、名切の伝説に登場するような、一つ目がふさわしいように思える。

④ダイダラボッチは台風の神だった?

ダイダラボッチは台風の神だとする説があり、私はこれを支持する。
巨人の踏鞴の神とは、台風のことだと考えると、なるほどと思う点が多い。

もういちど、「まんが日本昔ばなし」の「ダンダラボッチ」の内容を見てみよう。

三重県の名切という漁村の沖合にある大王島に一つ目の巨人・ダンダラボッチが住んでおり
島から海をひとまたぎして岩場を伝ってやってくる。
ダンダラボッチがやってくると、人々は岩陰などに隠れた。
猟師がとってきた魚は船ごと、米は蔵ごともっていってしまう。
抵抗すると泣きながら怒って大暴れし、田畑を荒す。家をつぶす。
くるたびに津波のような大騒ぎになる。
晴れた春の日、ダンダラボッチがまたやってきたが、「おまえより大きな巨人がくる」といって
大きな草鞋をみせて脅したところ
ダンダラボッチは怯えて大王島に戻り、二度と現れなかった。

まず、「ひとつ目の巨人」とあるが、台風は一つ目である。

台風の人工衛星画像(平成25年台風第30号)

台風の人工衛星画像(平成25年台風第30号)

次に、「人々は岩陰などに隠れる」とあるが、台風は強風であたりにあるものを吹き飛ばすので、屋外にいた場合は岩陰などの非難するのは良い方法である。

「猟師がとってきた魚は船ごと、米は蔵ごともっていってしまう。」
「抵抗すると泣きながら怒って大暴れし、田畑を荒す。家をつぶす。」
「くるたびに津波のような大騒ぎになる。」

は台風の被害である。ダイダラボッチが泣くというのは大雨をもたらすということだろう。


「晴れた春の日、「おまえより大きな巨人がくる」といって大きな草鞋をみせて脅したところ
ダンダラボッチは怯えて大王島に戻り、二度と現れなかった。」

というのは、春は台風シーズンではないため、ダンダラボッチは」やって来なかったということだろう。
※台風は7月~10月に多い。



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