太陽の木 と 月の木⑱ 一富士・二鷹・三茄子は鉱山の隠語?
①「一富士・二鷹・三茄子」は鉱物の隠語?
初夢で見ると縁起がいいとされる「一富士・二鷹・三茄子」の富士・鷹・茄子とは鉱山の隠語ではないかと私は考えている。
その理由を述べる。
❶栃木県那須町の近くには足尾銅山がある。
愛媛県新居浜市のなすび平の近くには銅山川が流れ、別子銅山がある。
愛媛県新居浜市のなすび平の近くには銅山川が流れ、別子銅山がある。
銅は茄子色をしている。そして茄子が鈴なりになっている状態を坑道に見立てたのではないか。
❷延暦寺には『なすび婆』の伝説が伝えられている。
昔宮中に仕えていた女が人を殺して地獄に堕ちた。
しかし仏の慈悲によって心は比叡山に住むことが許された。
織田信長の比叡山焼き討ちのとき、なすび婆は大講堂鐘楼の鐘をついて人々にこれを知らせた。
なすび婆とは比叡山大講堂鐘楼の鐘を擬人化したものではないか。
❸鷹は鷹の爪ではないか。
鷹の爪の赤い色は水銀を、また鷹の爪の実が鈴なりになるようすを坑道に見立てたのではないか。
❹富士は不死の意味で、輝きを失わない金を意味しているのではないか。
富士はまた藤をも意味し、藤の花が房になって咲くようすが坑道に喩えられたのではないか。
白毫寺
⓶「一富士・二鷹・三茄子」には続きがある。
「一富士・二鷹・三茄子」には続きがある。
「四扇・五煙草・六座頭」とも「四葬式、五雪隠」「四葬礼・五糞」「四葬式、五火事」と言ったりするそうだ。
③四扇・五煙草・六座頭も鉱山の隠語?
「四扇・五煙草・六座頭」も「一富士・二鷹・三茄子」と同様、鉱山に関する隠語だと私は考えている。
●扇は露天掘跡?
生野銀山 露天掘跡
上の写真は兵庫県生野銀山の露天掘の跡 (慶寿ひ)である。
鉱物が地表近くにある場合、坑道を作らずに地表から地下をめがけて掘っていくこともあり、これを露天堀といった。
露天掘の跡は様々な形があるのだろうが、生野銀山の露天堀跡は扇状になっている。
生野銀山
上記サイトの和銅採掘露天掘跡もやや縦長ですが扇の形に見える。
●煙草は口にくわえた松明?
残念ながら、今探してみても見つからないが、日本の鉱山で働く人々が口に松明をくわえている絵をネット上で見た記憶がある。
江戸時代の絵のように思えた。
鉱山で働く人が、口に松明をくわえているのは、作業に両手が使えるようにするためではないだろうか。
日の光が届かない坑道の中は真っ暗だっただろう。
松明は灯りとして口にくわえていたのではないだろうか。
あるいは、空気の存在を確認するためとも考えられる。
生野銀山
●煙草を吸う鉱山の神・ティオ
ボリビア・ポトシ鉱山の坑道にはティオという神様の像が祀られていて、煙草をお供えする習慣がある。
なぜ煙草なのかというと、鉱山で働く人々は口に松明をくわえるので、それを煙草に見立てたのではないだろうか。
でしょうか。
ティオの写真はこちら↓
●大子町にあるタバッコ峠
茨城県大子町にはタバッコ峠という地名があり、空海が峠を超えるときに煙草を吸ったところからタバッコ峠となったという伝説が残されている。
煙草が日本に伝えられたのは1601年なので空海が煙草をたしなんだということはないだろう。
大子町には栃原金山などの金山もある。
奈良時代、大子町で砂金が発見されている。
安土桃山時代から江戸時代にかけては常陸佐竹氏によって金山開発が行われた土地だった。
大子町は古くから鉱山があったので、鉱夫たちが口にくわえた松明をタバコ(煙草)と呼び、そこからタバッコ峠となったのではないかと想像する。
●六座頭は暗闇で働く坑夫を意味する?
座頭とは江戸時代の盲人の階級のひとつである。
今観光施設となっている坑道などでは照明がついているが、昔の坑道には照明などなく真っ暗だったことだろう。
そのため口に松明をくわえて作業したのではないかと想像するのだが、暗いと物がよく見えない。ませんね。
座頭とは坑夫の隠語ではないかと思ったりする。
●盲目はたたらの職業病
またたたら場で働く人々は片目をつぶって火の温度を見るため、片目を失明することが多かったという。
それを座頭と言っているのかもしれない。
④「四葬式、五雪隠」「四葬礼・五糞」「四葬式、五火事」は?
正月の初夢で縁起がいいものが、葬式(葬礼)・雪隠(トイレのこと。糞は同じ意味だろう)・火事というのは、おもしろい。
この葬式・トイレ・火事も鉱山に関わるもののような気がする。
葬式の際、土を掘って穴に遺体をおさめる。これは穴を掘ってその中にはいる鉱夫のイメージではないだろうか。
トイレは現在は水洗が主流だが、汲み取り式トイレは穴の中に排泄する。これも鉱山のイメージだ。
浦安郷土博物館 汲み取り式トイレ(展示物)
火事は、たたら吹きや鋳造のようすを比喩的に表現したものだと思う。
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