太陽の木 と 月の木⑳ 榎木は「愛の木」で太陽と月が和合した木?
太陽の木 と 月の木⑲高野御子神は月の神?丹生都比賣神社は星の神? よりつづきます~。
①大阪にも鎌八幡宮があった。
大阪にも鎌八幡宮と呼ばれている寺がある。円珠庵である。
円珠庵のホームページには次のように由来が記されている。
遠い昔、このあたりは三韓坂と言われた古道で、そのわきに一本の榎の霊木があり、人々の信仰を集めていた。
遠い昔、このあたりは三韓坂と言われた古道で、そのわきに一本の榎の霊木があり、人々の信仰を集めていた。
下って、大阪冬の陣のとき、真田幸村がこの土地に陣所を構えたが、この信仰を聞き伝えて、鎌を打ちつけ、鎌八幡大菩薩と称して祈念したところ、大いに戦勝をあげたと伝えられている。
江戸時代初期には、この鎌八幡の境内に、国文学者として有名な高僧契沖阿闍梨が居を定め、円珠庵と称した。契沖は、ここで万葉代匠記や和字正鑑要略を著し、国文学の研究に専念すると同時に、深く鎌八幡を信仰した。この頃から「鎌八幡」は「祈とう寺」として、人々の信仰が広まった。
大正11年に、境内全域が大阪市では最初の国の史跡指定を受けたが、境内の大部分は、戦災で損壊したあと復興したものである。その間、霊木は蘇生し、絶えなる信仰と多くの霊験が得られている。
この近くには真田幸村の陣所と伝わる真田丸跡、三光j神社境内には、真田の抜け穴などもあった。
真田丸顕彰碑
〇で囲んだ部分が真田丸
円珠庵境内は撮影禁止となっているので写真はないが、丹生酒殿神社摂社の鎌八幡宮、兄井の鎌八幡宮(元鎌八幡宮)同様、大量の鎌が御神木につきたてられており、長い箒状の注連縄がはられていた。
⓶大阪の鎌八幡宮の御神木はイチイガシではなく榎木だった。
円珠庵由緒で気になるのは、御神木が榎木と記されている点だ。
丹生酒殿神社摂社の鎌八幡宮、兄井の鎌八幡宮(元鎌八幡宮)では櫟樫に鎌がつきたてられていたが
円珠庵では榎木に鎌がつきたてられているのだ。
円珠庵では榎木に鎌がつきたてられているのだ。
円珠庵(鎌八幡)
上の写真の、黄色い葉をつけているのが榎木である。
榎木は落葉樹で、落葉する前には黄色く色づく。
榎木は落葉樹で、落葉する前には黄色く色づく。
私が円珠庵を訪れたのは12月半ば過ぎで、紅葉の見ごろは過ぎたころだったが
まだわずかに葉が残っていた。
私は丹生酒殿神社の御神木のイチョウは太陽、
丹生酒殿神社摂社の鎌八幡宮、兄井の鎌八幡宮(元鎌八幡宮)の御神木・櫟樫は月であらわすのではないかと考えた。
丹生酒殿神社 イチョウ
兄井 鎌八幡宮(元鎌八幡宮) イチイガシ ↑ ↓
上は熊野勧心十戒曼荼羅だが、向かって右の黄色の丸は太陽、向かって左の灰色の丸は月を表していると思う。
そしてイチョウの落葉前の葉の色は黄、櫟樫の暗い緑色は灰色のように見えるので、
イチョウは冬至に向かって衰えていく太陽を、櫟樫は月をあらわし、三日月の形をした鎌を突き立てるのだろうと考えた。
しかし天寿庵の鎌を突き立てられている榎木は、常緑樹の櫟樫よりは、落葉樹のイチョウににている。
これはどう考えれば辻褄があうのか。
③榎木は太陽のイメージ。
信仰の形はひとつとは限らない。
むしろ、信仰にはさまざまなバリエーションがあると考えたほうが自然だろう。
(イチョウ=冬至に向かって衰えていく太陽、櫟樫=月)と考える信仰とは別の信仰があってもおかしくはない。
黄色く色づいて落葉する榎木は樹形も丸く、冬至に向かって葉をちらしていく様子は公孫樹と同じく、冬至にむかって衰えていく太陽のイメージがある。
ここに、月をイメージさせる鎌を打ち込むことで、古い太陽を完全に殺し、冬至以降、復活する(南中高度をあげ勢いをます)太陽を迎えるという儀式だったりして?
ここに、月をイメージさせる鎌を打ち込むことで、古い太陽を完全に殺し、冬至以降、復活する(南中高度をあげ勢いをます)太陽を迎えるという儀式だったりして?
太陽と月が重なる現象である日食は、太陽の光をさえぎって、世の中を夜のようにしてしまう。
そういう意味で、月は太陽を殺す存在と考えられてたのかもしれない。
④男女双体の神
神はその現れ方によって3つに分けられるといわれる。
御霊・・・神の本質
和魂・・・神の和やかな側面
荒魂・・・神の荒々しい側面
そして、男神は荒魂を、女神は和魂を表すといわれる。とすれば御霊は男女双体の神と言うことになると思う。
そして、男神は荒魂を、女神は和魂を表すといわれる。とすれば御霊は男女双体の神と言うことになると思う。
大聖歓喜天は象頭をした男女双体の神で、次のような伝説がある。
人々に祟りをもたらしていたビナヤキャは十一面観音の化身であるビナヤキャ女神に一目ぼれし、ビナヤキャ女神に結婚を申し込んだ。
ビナヤキャ女神は「仏法守護を誓うならあなたと結婚しましょう」といった。
ビナヤキャは仏法守護を誓い、ビナヤキャ女神と結ばれた。
大聖歓喜天の、足を踏みつけているほうがビナヤキャ女神、足を踏まれているほうがビナヤキャとされる。
この説話は御霊、和魂、荒魂の性質をうまく表していると思う。
すなわち、男神である荒魂は、女神である和魂に足をふみつけられて、動けない状態にされている。
これが「神の結婚」の意味なのだと思う。
榎木は雄花と雌花をもつ雌雄同体の植物で、4月から5月ごろ、葉の根元に小さな花をつける。
そして10月ごろ、黄葉した葉の後ろに、直径5 - 6ミリメートル (mm) の丸い実をつけるのだという。
雌雄同体である榎木は、この歓喜天のイメージがある。
古には「愛」は「え」と呼んだ。
榎木(エノキ)の語源は、「愛(え)の木」であり、太陽と月が和合した樹であると考えられたのかもしれない。
そして、この鎌八幡宮の神紋は、二つの鎌が交差する形であり、これは聖天さんの違い大根の紋に似ている。
待乳山聖天
交差する形は、男女和合を表しているようにも見える。
へつづく~
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