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不死王伝説② (久安寺) ※一部書き直しました。

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久安寺 かきつばた
久安寺 かきつばた

久安寺・・・大阪府池田市伏尾町697


ちょっと長くなるが、前回のおさらいをしておこう。

私は前回 「不死王伝説① (久安寺)」、次の3つの話を紹介した。

①久安寺に伝わる伝説
「平安時代、鳥羽天皇の御世、賢実上人が久安寺において皇后の安産祈願を行い、その結果、皇后は懐妊して近衛天皇をお産みになられた。
そのためこの地は不死王村と呼ばれるようになり、不死王村が転じて伏尾になった。」

②妖・怪鵺
「近衛天皇が毎晩何かに怯えるようになり、源頼政が警護にあたった。
深夜、頼政が御所の庭を警護していたところ、艮(うしとら)の方角(=北東の方角)よりもくもくと黒雲が湧き上がり、その中から頭が猿、胴が狸、手足が虎、尾が蛇という鵺と呼ばれる怪物が現れた。
頼政は弓で鵺を射、郎党・猪早太(いのはやた)が太刀で仕留めた。
その後、頼政は仕留めた鵺の体をバラバラに切り刻み、それぞれ笹の小船に乗せて海に流した。」

③落語『池田の猪買い』
「冷え気(淋病のこと)に悩む男が『冷え気には猪(しし)肉が効く』と聞き、池田の狩人の元を訪ね、『新しい肉が欲しいので射ちに行ってほしい』と頼んだ。
狩人は男を連れて山にいき、猪を討った。
男は狩人が打った猪を『あの猪は新しいか』と聞いた。
狩人が猪を鉄砲の台尻でたたくと、猪は鉄砲の音で目を廻していただけだったので、目を覚まして逃げていった。
その様を見て狩人は『どうじゃ。あの通り新しい。』と言った 。 」

そして次のようなことを述べた。
a.近衛天皇は17歳で崩御しており不死王という名前にふさわしくない。
b.近衛天皇の死は崇徳の呪詛によるものだと考えられていた。
c.近衛天皇がおびえた鵺とは崇徳の生霊なのではないか。
d.鵺をしとめた猪早太は干支の戌亥(乾)のことであるとする説がある。
  猪=亥
  早=隼人=宮廷で犬の鳴き声をまねて警護していた=犬=戌
e.鵺は顔が猿である。猿=申、もしくは未申(坤)のことではないか。
f.八卦では乾は全陽、坤は全陰である。
g.陰陽道では陰が極まると陽に転じると考える。
h.祟り神を祀りあげれば守護神になるという信仰はこの陰陽道の考え方からくるのではないか。
i.陰=鵺、陽=猪早太で、猪早太とは鵺=崇徳の怨霊が陽に転じたものではないか。
j.池田には猪早太=猪に対する信仰があり、そこから落語「池田の猪買い」が創作されたのではないか。
 (実際にそういう信仰があったかどうかは未確認だが。)




猪に対する信仰といえば、宮崎県・高千穂神社に伝わる「鬼八伝説」を思い出す。

「蘭(あららぎ)の里の窟に住む鬼八は足がたいへん強く、昼間は辺り一帯を荒らしまわり、夜になると窟に隠れた。
鬼八には阿佐羅姫という美しい妻があった。
御毛沼命は阿佐羅姫が鬼八の妻であることを不憫に思い、鬼八を退治することにした。
鬼八は夜になると窟に隠れてしまうので、命は沈もうとしていた夕陽を呼び戻して鬼八をまちぶせ、そこへ現れた鬼八を剣で切って殺した。
命は鬼八の死体をばらばらにして、地中に埋めたが、鬼八は一夜のうちに蘇って、もとの姿に戻り、土地を荒らしまわった。
今度は田部重高という者が鬼八を殺し、頭を加尾羽(かおば)に、手足を尾羽子(おばね)に、また胴を祝部(ほうり)の地にそれぞれ分葬した。こうしてやっと鬼八は蘇生しなくなった。 
ところが、鬼八は死んだ後も地下で唸り声をあげ、霜を降らせて村人を困らせた
村人は鬼八の祟りを恐れ、鬼八申霜宮という祠をたててその霊を祀り、また毎年16歳の生娘を人身御供としてさしだし、慰霊をした。
天正年間(1573-93年)に生娘のかわりに猪がささげられるようになり、猪掛祭(12月3日)と呼ばれている。
神前に猪をささげ、『鬼八眠らせ歌』を歌いながら笹を左右に振る『笹振り神楽』を舞う。
こうすることで鬼八は神となり、霜害を防ぐ霜宮に転生すると信仰されていた。」

この伝説では鬼八は死体をばらばらにされているが、妖怪・鵺の伝説でも鵺は死体をばらばらにされている。
鬼八と鵺には共通点がある。

さて、神はその表れ方で、御霊・荒霊・和霊の3つにわけられるという。

御霊・・・神の本質
荒霊・・・神の荒々しい側面
和霊・・・神の和やかな側面


前回、祟り神について説明したが、荒霊とは祟り神=陰であり、これを祀り上げることで守護神に転じさせたものが和霊=陽(守護神)だということだろう。
これは陰が極まれば陽に転じるとする陰陽道の考え方よりくるものだと思う。

御霊・・・神の本質
荒霊・・・神の荒々しい側面 ・・・陰(祟り神)
和霊・・・神の和やかな側面・・・陽(守護神)


そして男神は荒霊を、女神は和霊を表すとする説がある。

御霊・・・神の本質
荒霊・・・神の荒々しい側面 ・・・陰(祟り神)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・男神
和霊・・・神の和やかな側面・・・陽(守護神)御霊・・・神の本質・・・・女神


※本来は男が陽で女が陰となるはずである。
しかし祟り神とは鬼のことであるとも考えられ、鬼という言葉は陰からくるとされる。
よって荒霊=祟り神は陰と考えざるをえない。
陽=太陽、月=陰であるが日本では太陽神は女神となって逆になっている。
陰陽の逆転はこのことと関係があるのかもしれない。

鬼八申霜宮では生娘を人身御供としていたという。
鬼八は荒霊、生娘は和霊ということだろう。
そして生娘のかわりに供えられるようになったという猪もまた和霊だと思う。

御霊・・・神の本質
荒霊・・・神の荒々しい側面 ・・・陰(祟り神)・・・男神・・・鬼八・・・・・・・鵺
和霊・・・神の和やかな側面・・・陽(守護神)・・・女神・・・生娘=猪・・・猪早太


鵺伝説においては、鵺が荒霊で、猪早太が和霊だろう。
ということは猪早太は女神なのか?

猪と陽炎の女神 (摩利支尊天堂) 」 へつづく

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