ひととせに ひとたび来ます 君待てば 宿かす人も あらじとぞ思ふ
織姫は一年に一度いらっしゃる君(=彦星)を待っているのだから、宿を貸す人はないだろう。
帰って宮に入った。
夜が更けるまで酒を呑み、語り、主人の親王は床に入ろうとなさった。
十一日の月が山に隠れようとしているのであの馬頭が詠んだ。
飽かなくに まだきも月の 隠るるか 山の端逃げて 入れずもあらなむ
(ずっと眺めていても 飽きないのに 早くも月は隠れてしまうのか。山の端が逃げて月を入れないでおいてほしい。) 親王にかわり申し上げて紀有常
おしなべて 峰も平に なりななむ 山の端なくは 月も入らじを
(すべての峰が平らになってほしい。山の端がなくなれば月は入らないだろう。)
日置天神社の伝説から思い出されるのは、上の渚の院の話の中の次の部分である。
飽かなくに まだきも月の 隠るるか 山の端逃げて 入れずもあらなむ (ずっと眺めていても 飽きないのに 早くも月は隠れてしまうのか。山の端が逃げて月を入れないでおいてほしい。) 親王にかわり申し上げて紀有常
おしなべて 峰も平に なりななむ 山の端なくは 月も入らじを (すべての峰が平らになってほしい。山の端がなくなれば月は入らないだろう。)
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日置天神の伝説・・・・・
惟喬親王(844~897)が交野ケ原で遊猟したとき、愛鷹のの姿が見えなくなったので、日没を惜しんで「日を止め置かせ給え」と天神に祈願した。
渚の院の記述・・・・・
すべての峰が平らになってほしい。山の端がなくなれば月は入らないだろう。)
日置天神の伝説では惟喬親王は「日よ、沈むな」と詠い、
渚の院では惟喬親王の代理の紀有常が「月よ、沈むな」と詠っている。
これはなにか関係がありそうだ。とあり
「十一日の月が山に隠れようとしているので」
とあり、月齢が11日であることがわかる。
季節は桜の咲くころなので、旧暦3月11日(新暦4月11日ごろ)だろうか。
月齢、月の形については下記イラストを参照してください。
https://www.nomu.com/ouchi/special/201309/03.html
大阪府の4月の月の出、月の入時刻は下記。
2021年 4月日 | 出 | 方位[°] | 南中 | 高度[°] | 入り | 方位[°] | 月齢[日] |
---|
1 | 22:30 | 115.3 | 2:43 | 37.8 | 8:02 | 247.9 | 18.7 |
2 | 23:41 | 119.5 | 3:41 | 33.3 | 8:46 | 242.7 | 19.7 |
3 | --:-- | ---- | 4:40 | 30.4 | 9:36 | 239.4 | 20.7 |
4 | 0:47 | 121.6 | 5:40 | 29.1 | 10:33 | 238.2 | 21.7 |
5 | 1:46 | 121.4 | 6:39 | 29.6 | 11:34 | 239.3 | 22.7 |
6 | 2:36 | 119.2 | 7:35 | 31.6 | 12:38 | 242.2 | 23.7 |
7 | 3:18 | 115.4 | 8:27 | 34.9 | 13:41 | 246.6 | 24.7 |
8 | 3:54 | 110.4 | 9:15 | 39.2 | 14:43 | 252.1 | 25.7 |
9 | 4:25 | 104.6 | 10:01 | 44.1 | 15:43 | 258.3 | 26.7 |
10 | 4:54 | 98.3 | 10:43 | 49.3 | 16:40 | 264.8 | 27.7 |
11 | 5:20 | 91.9 | 11:25 | 54.7 | 17:37 | 271.3 | 28.7 |
12 | 5:46 | 85.5 | 12:06 | 60.1 | 18:33 | 277.8 | 0.0 |
13 | 6:12 | 79.3 | 12:47 | 65.2 | 19:29 | 283.9 | 1.0 |
14 | 6:40 | 73.5 | 13:29 | 69.9 | 20:26 | 289.5 | 2.0 |
15 | 7:11 | 68.3 | 14:13 | 74.0 | 21:23 | 294.3 | 3.0 |
16 | 7:45 | 64.0 | 14:59 | 77.3 | 22:20 | 298.0 | 4.0 |
17 | 8:24 | 60.8 | 15:48 | 79.5 | 23:16 | 300.5 | 5.0 |
18 | 9:09 | 59.0 | 16:39 | 80.6 | --:-- | ---- | 6.0 |
19 | 10:00 | 58.8 | 17:31 | 80.4 | 0:10 | 301.3 | 7.0 |
20 | 10:56 | 60.3 | 18:23 | 78.8 | 0:59 | 300.5 | 8.0 |
21 | 11:58 | 63.5 | 19:15 | 75.9 | 1:45 | 298.0 | 9.0 |
22 | 13:02 | 68.3 | 20:06 | 71.6 | 2:25 | 293.9 | 10.0 |
23 | 14:09 | 74.5 | 20:57 | 66.3 | 3:02 | 288.4 | 11.0 |
24 | 15:17 | 81.8 | 21:48 | 60.2 | 3:36 | 281.7 | 12.0 |
25 | 16:26 | 89.7 | 22:39 | 53.6 | 4:09 | 274.2 | 13.0 |
26 | 17:38 | 97.9 | 23:31 | 46.8 | 4:41 | 266.3 | 14.0 |
27 | 18:52 | 105.8 | --:-- | ---- | 5:15 | 258.4 | 15.0 |
28 | 20:07 | 112.8 | 0:26 | 40.5 | 5:53 | 251.0 | 16.0 |
29 | 21:22 | 118.1 | 1:25 | 35.2 | 6:36 | 244.8 | 17.0 |
30 | 22:34 | 121.2 | 2:26 | 31.3 | 7:25 | 240.4 | 18.0 |
月齢11日は2021年4月では23日で、月の出は午後2時9分、月の入は翌日の午前3時2分となっている。
彼らは随分遅くまで酒をのんでは歌を詠んでいたということがわかる。
しかし、わかるのはここまでである。
なぜ日置天神では「日よ沈むな」と詠い、渚の院では「月よ沈むな」と詠ったのか?
長い文章を45話も書き、その間中考えていたが、結局わからなかった。
しかし、これから旅を続けるなかで、もしかしたらその答えを導くヒントにであえるかもしれない。

長々とお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
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