惟喬親王の乱⑬ 上加茂神社 烏相撲 『紀名虎&藤原良房の世継ぎ争い』
惟喬親王の乱⑫ 正明寺『惟喬親王を厚く信仰した日野の木地師・塗師たち』 よりつづきます~
「小野小町は男だった」もよかったらよんでみてね。

①重陽とは何か?
陰陽道ではすべてのものは陰陽両面をもつと考える。
例えば人間は男が陽で女が陰。天地では天が陽で地が陰である。
数字では、奇数が陽、偶数が陰である。
古代中国では、1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日は、「陽(月)+陽(日)=陰」になるとして避邪の行事が行われていた。
1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日は五節句といわれ、お祝いをしたりするが、もともとは避邪の行事だったのである。
特に9は一桁の奇数としては一番大きな数であるために「陽の極まった数」と考えられ、「陽の極まった数の重日」ということで「重陽」と呼ばれていた。
日本においても宮中では「観菊の宴」などが開かれ、盛大に祝われた。

烏相撲を見つめる斎王代
②重陽と烏相撲
重陽の日(9月9日)、上賀茂神社では烏相撲が行われる。
なぜ、重陽の日に相撲が行われるのだろうか?
①で私は次のように書きました。
a.陰陽道ではすべてのものは陰陽両面をもつと考える。
b.人間は男が陽で女が陰。天地では天が陽で地が陰。数字では奇数は陽、偶数は陰。
性別 | 天地 | 天体 | 光度 | 天気 | 生死 | 数字 | |
陰 | 女 | 地 | 月 | 暗 | 雨 | 死 | 偶数 |
陽 | 男 | 天 | 太陽 | 明 | 晴 | 生 | 奇数 |
上賀茂神社の烏相撲は男(陽)と男(陽)が取り組みを行うというもので、これはまさしく重陽である。
そういうわけで、重陽の日に烏相撲を行っているのではないかと私は考えている。
③烏相撲は上賀茂神社の親神である松尾の大山咋神に見せるために行われている。
「烏相撲は上賀茂神社の親神である松尾の大山咋神に見せるために行われている」といわれている。

松尾大社
つまり、松尾大社のの御祭神・大山咋神は上賀茂神社の御祭神・別雷命の父神ということになる。
こんな伝説がある。
ある日、川から丹塗りの矢が流れてきた。
玉依姫がこれを持ち帰り、枕元に置いて寝るとやがて妊娠し、別雷命が生まれた。
上賀茂神社の御祭神は別雷命で、下鴨神社の夫婦神・玉依姫と賀茂健角身命の御子が別雷命とされる。
つまり丹塗り矢の正体は賀茂健角身命である。
そして玉依姫の父親が松尾大社のの御祭神・大山咋神ということになる。

三本脚の八咫烏は賀茂健角身命の神使とされる。
④紀名虎と藤原良房の相撲によるバトル
松尾大社は虚空蔵法輪寺と近い場所にある。
松尾大社は秦氏の氏神だが、虚空蔵法輪寺がある付近にかつては三光明星尊を祀る葛野井宮(かずのいぐう)があり、秦氏は葛野井宮を尋ねてこの地にやってきたと伝わる。
虚空蔵法輪寺は秦氏と関係のある寺である可能性が高い。
そして、この虚空蔵法輪寺には紀氏の母親を持つ惟喬親王の伝説が伝えられている。
平安時代、この寺に惟喬親王が籠もったとき、虚空蔵菩薩が惟喬親王に漆の製法を授けたというのだ。
「なんで紀氏の母親を持つ惟喬親王?秦氏じゃないの?」と思われるだろう。
秦氏創建と伝えられる伏見稲荷大社はもともと紀氏の神を祀る神社であったのを、秦氏が土地を奪ったといわれる。
今でも紀氏の氏神を祀る藤森神社の祭では伏見稲荷大社に乗り込んで「土地返せ、土地返せ」とはやし立てるそうである。
松尾大社・虚空蔵法輪寺のあるあたりも、もともと紀氏の土地だったのが、秦氏に奪われたのかもしれない。

藤森神社
もしそうだとしたら、オモシロイことになる。
文徳天皇には紀静子との間に惟喬親王が、藤原明子との間に惟仁親王(清和天皇)があった。
平家物語などに、紀静子の父・紀名虎と藤原明子の父・藤原良房が、いずれの孫を皇太子にするかで対立し、高僧の祈祷合戦・相撲などを行った結果、藤原良房が勝利したと記されている。
紀名虎は847年に亡くなっており、惟仁親王(清和天皇)が生まれたのが850年なので、これは史実ではなく、フィクションなのだが。
「烏相撲は上賀茂神社の親神である松尾の大山咋神に見せるために行われている」といわれてることを思い出してほしい。
紀名虎または惟喬親王は、松尾の大山咋神とイメージが重ねられているのではないだろうか。
つまり、烏相撲は、紀名虎または惟喬親王に、世継ぎを決める相撲で、あなた方は負けたんだよ、ということを思い出させるために行われているのかもしれない。

烏相撲を見つめる斎王代

惟喬親王の乱⑭ 法輪寺 重陽神事 『惟喬親王、菊のしずくを飲んで不老長寿を得る?』 に続きます~
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