陰陽 黒と白 ⑲白髪が黒髪になった娘と白山信仰 よりつづきます~
私の陰陽についての考察は、前回まででひととおり説明を終えた。
今回は今までの話を簡潔にまとめておきたいと思う。
①獏のモデルはマレーバク?莫(「悪い夢を食べてくれる」と信仰される伝説の動物)について、中国の文献には次のようにある。
貘屏賛・・・鼻はゾウ、目はサイ、尾は牛、脚は虎に似ている。
爾雅 釈獣・・・白豹
説文解字・・・熊に似て黄黒色、蜀中(四川省)に住む。(パンダ?)
爾雅 郭璞注・・・熊に似て頭が小さく脚が短く、黒白のまだらで、銅鉄や竹骨を食べる。
説文解字注・・・・今も四川省にいる。(パンダ?)古代中国にはマレーバクが生息していたが、絶滅したとされる。
マレーバクの子供は黒白まだらである。
マレーバクは大人になると黒白モノトーンになり、太極図を思わせる。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3AYin_yang.svg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/17/Yin_yang.svg よりお借りしました。
作者 Gregory Maxwell [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で太極図は白と黒の図で構成され、白は陽、黒は陰をあらわす。
古事記に次のように記されている。
昔、天地がまだ別れず、陰陽も分かれておらず、混沌として卵の中身のように固まっていなかったが、薄暗い中にきざしがあった。
やがて清らかな陽気がたなびいて天となり、重く濁った陰の気が滞って地となった。(天地開闢)マレーバクは子供のころは黒白がまだらになっているのだが、成長すると白黒にくっきりわかれた柄になる。
この様子はまるで古事記に記された天地開闢のようである。
夢を食べる獏とはマレーバク、もしくはマレーバクをモデルとして想像されたものであり
マレーバクの白黒モノトーンの柄が太極図を思わせるため、「悪い夢(陰)を食べて、よいこと(陽)に転じさせる」と信仰されたのではないか。
貴船神社 白馬・黒馬の像②陰陽の神々 | 白い神(陽) | 黒い神(陰) | 白黒混ざりあう神 | |
莫 | | | 莫(マレーバクがモデル?) | |
馬 | 白馬(晴祈願に奉納) 陰陽では晴は陽 | 黒馬(雨祈願に奉納) 陰陽では雨は陰 | | |
鳥 | 白鳥(ヤマトタケル) =復活した神の霊 ヤマトタケルの墓は複数ある。 =ヤマトタケルは復活した =生霊 | 八咫烏 =復活しない神の霊 =死霊 | | 八咫烏は三本足 足と書いて「たらし」と読み、三人の「たらし」を意味しているのではないか? 12代景行天皇(おおたらしひこおしろわけのすめらみこと) 13代成務天皇(わかたらしひこのみこと) 14代仲哀天皇・たらしなかつひこのすめらみこと) |
住吉明神 | 息長足姫命 (おきながたらしひめのみこと) =生霊 | 底筒男命 中筒男命 表筒男命 =死霊 | | 底筒男命・中筒男命・表筒男命は三人の「たらし」で八咫烏ではないか?
息長足姫命の「息」は「生命」に通じる=生霊 |
生國魂神社 | 生島大神(白杖代?) =生霊 | 足島大神 =死霊 | | 足島大神は三人の「たらし」で、八咫烏=景行・成務・仲哀? (足は「たらし」と読むが、三天皇の和風諡号に「たらし」とある。) 生島大神は神功皇后(和風諡号は生長帯比売命とも書くが「息」の音は「生」に通じる。) |
六歌仙 | 小野小町 喜撰法師 (二歌仙は惟喬親王と同一人物?) =生霊 | 大友黒主 (大伴家持と同一人物?) =死霊 | | 小野小町は九十九髪(百引く一は白→白髪→白い神) 喜撰法師は入定して腐らない(永遠の命を持つ神=生霊) 大伴家持は藤原種次暗殺事件にかかわったとして死後墓から掘り出されて流罪となった。 →腐っていた→死霊 |
翁・翁舞 | 白式尉(志貴皇子) 山人/いきぼとけと読む | 黒式尉(志貴皇子) 田人/種まきの所作をする | | 地元の伝承に翁は志貴皇子と伝えられている。
|
勝尾寺 | 白髪の娘 | 黒髪の娘 | | |
白山 | 冠雪の白山 | 雪が溶けた白山 | 白山(季節によって白→黒 黒→白と変化する) | |

上賀茂神社 八咫烏を描いた提灯③白い神は生霊(腐らない神)、黒い神は死霊(腐った神)?
小野小町と大友黒主の例をあげる。
人物 | 腐ったか(死)、腐らなかったか(生)。 | 陰陽 | 白黒 |
小野小町(小野宮と呼ばれた惟喬親王と同一人物?) | 腐らなかった。(生)
惟喬親王は虚空蔵菩薩より漆の製法を授けられたという伝説がある。 惟喬親王は漆を飲んで即身仏となったため、このような伝説ができたのではないか。 また古の人は腐らない体を生きていると考えたのではないか。 | 生は陰陽道では陽 | 陽は陰陽道では白 |
大友黒主(大伴家持と同一人物?) | 腐った。(死)
藤原種継暗殺事件に関与したとして、すでに死んでいたのだが死体が掘り出されて流罪となった。 その体は腐っていたことだろう。 古の人は腐った死体を生きていない(死)と考えたのではないか | 死は陰陽道では陰 | 陰は陰陽道では黒 |
加茂船屋 六歌仙を描いた屏風 向かって右上から、大友黒主・小野小町・喜撰法師、向かって左上から在原業平・遍照・文屋康秀か?
④3対1
白い神と黒い神は、3対1または1対3になっているケースがある。
| 白い神(陽) | 黒い神(陰) | |
鳥 | 白鳥(ヤマトタケル)
| 八咫烏
| 八咫烏は三本足 足と書いて「たらし」と読み、三人の「たらし」を意味しているのではないか? 12代景行天皇(おおたらしひこおしろわけのすめらみこと) 13代成務天皇(わかたらしひこのみこと) 14代仲哀天皇・たらしなかつひこのすめらみこと) |
住吉明神 | 息長足姫命 (おきながたらしひめのみこと)
| 底筒男命 中筒男命 表筒男命
| 底筒男命・中筒男命・表筒男命は三人の「たらし」で八咫烏ではないか?
|
生國魂神社 | 生島大神(白杖代?)
| 足島大神
| 足島大神は三人の「たらし」で、八咫烏=景行・成務・仲哀? (足は「たらし」と読むが、三天皇の和風諡号に「たらし」とある。)
|
六歌仙 | 小野小町=喜撰法師=惟喬親王
| 大友黒主=大伴家持
| |
翁舞 | 白式尉(三人) | 黒式尉(一人) | |
※六歌仙のみ、3対2になっている。
神はその表れ方で、御霊・荒魂・和魂の三つに分けられるという。
三柱の神々はこれを表すものではないか。
御霊 | 神の本質 |
荒魂 | 神の荒々しい側面 |
和魂 | 神の和やかな側面 |
髄心院 小野小町像
祇園祭 黒主山ご神体 大伴黒主像⑤神の性別を変える呪術
| 白い神(陽) | 黒い神(陰) | |
馬 | 白馬(晴祈願に奉納)
| 黒馬(雨祈願に奉納)
| |
鳥 | 白鳥(ヤマトタケル) ヤマトタケルが女装するシーンあり | 八咫烏
| 八咫烏は三本足 足と書いて「たらし」と読み、三人の「たらし」を意味しているのではないか? 12代景行天皇(おおたらしひこおしろわけのすめらみこと) 13代成務天皇(わかたらしひこのみこと) 14代仲哀天皇・たらしなかつひこのすめらみこと) |
住吉明神 | 息長足姫命
| 底筒男命 中筒男命 表筒男命
| 底筒男命・中筒男命・表筒男命は三人の「たらし」で八咫烏ではないか?
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生國魂神社 | 生島大神=息長足姫命? | 足島大神 =底筒男命・中筒男命・表筒男命 | 足島大神は三人の「たらし」で、八咫烏=景行・成務・仲哀? (足は「たらし」と読むが、三天皇の和風諡号に「たらし」とある。) 生島大神は神功皇后(和風諡号は生長帯比売命とも書くが「息」の音は「生」に通じる。) |
六歌仙 | 小野小町 喜撰法師 (二歌仙は惟喬親王と同一人物?)
| 大友黒主=大伴家持 | 小野小町は九十九髪(百引く一は白→白髪→白い神) 喜撰法師は入定して腐らない(永遠の命を持つ神=生霊) |
翁・翁舞 | 白式尉(志貴皇子)
| 黒式尉(志貴皇子)
| 地元の伝承に翁は志貴皇子と伝えられている。 |
勝尾寺 | 白髪の娘 | 黒髪の娘 | |
白山 | 冠雪の白山 | 雪が溶けた白山 | |
女神は赤字、
男神は青字、
性別不明の神は緑字で表した。
陰陽道で性別をいうと男が陽で女が陰だが、逆になっているケースが多い。
女神は和魂、男神は荒魂をあらわすとする説があるが、それにあわせた結果、女神が陽の神=白い神=生の神となっているのかもしれない。
また、陰陽どちらの神も男神であったり、女神であったりするケースもある。
これについては宿題としてもう少し考えてみたいが、神の性別を変える呪術の存在があったということは考えられる。
俗謡に「おまえ百までわしゃ九 十九まで、共に白髪の生えるまで」というのがある。
これは謡曲「高砂」の尉・姥からくるもので
尉が熊手をもち、姥が箒をもって掃いているのは、熊手=九十九まで、掃く(まで)=百(まで)という語呂合わせであるという。
尉・・・熊手をもつ→九十九まで→くじゅうくまで)
姥・・・箒をもつ→掃く→はく→・ひゃく→百それで「おまえ百まで、わしゃ九十九まで」と謡うのだろう。
亀岡祭 高砂山 御神体しかし語呂合わせはこれで終わりではなかった。
肝心なのは「共に白髪の生えるまで」のほうだと私は考える。
なぜ、「共に白髪の生えるまで」と謡うのか。
九十九髪とは白髪のことであるという。
そのココロは
百-一=九十九
百-一=白
∴九十九=白というわけだ。うまい。座布団2枚!
また
百は掃く=はくなので、
はく=白に転じる。
尉・・・熊手をもつ→九十九まで→くじゅうくまで)→百-一=白
姥・・・箒をもつ→掃く→はく→・ひゃく→百→はく→白
このように、尉も姥もどちらも白になる。
それで「共に白髪の生えるまで」と謡うのではないだろうか。
さらに、尉も姥もどちらも最終的に白になるので、
尉=白
姥=白
∴尉=姥=白こうして男神である尉は女神である姥に転じるというわけだ。
end.

奈良豆比古神社 翁舞 ↑ ↓

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