1⃣縄文土器は食用植物のフィギュアだった?
上の動画はとても面白い内容である。
土偶は奇妙な形をしているなあ、と常々思っていたが、顔が食用植物の形と聞くと、なるほど、と思える。
9:15あたりの画像は、向かって左から
オニグルミ、クリ、トチノミ、ハマグリ、これは何という貝かわからない、イタボガキ
そのほかにも、竹倉 史人さんは「遮光器土偶はサトイモである」などとしておられるが、遮光器土偶がサトイモというのはちょっと納得がいかない。

遮光器土偶
サトイモ
そうではあるが、オニグルミ、クリ、ハマグリは確かにそのように見えるし、祖の説がまちがっていたとしても発想がすばらしい。
この竹倉 史人さんの説については、また改めて考えて見たいと思う。
今日なぜ、冒頭で竹倉 史人さんの説を紹介したのかといえば、
「昔の人は、この土偶のように、物の形にインスピレーションをうけて、仏像を製作したのではないか」と私は思っていて、それを説明したいと思ったからである。
2⃣蟹の死体から現れた観音
前回、私は山梨県山梨市万力にある長源寺に伝わる蟹坊主の話をした。
長源寺のご本尊の千手観音は、巨大な蟹の死体からあらわれたとされる。
長源寺のご本尊の写真はこちら↓
下の蟹満寺の額と長源寺のご本尊の写真を比べてみてほしい。
長源寺の千手観音の腕の付き方がカニの脚のように見える。
京都市金戒光明寺の吉備観音は立像だが、やはり腕がカニのように見える。
滋賀県長浜市の高月観音の里には珍しい千手千足観音がおられるが、この観音様は二体のカニが合体した観音様ではないかと思う。
これは蟹の交尾を撮影したものとのこと。
2⃣蜘蛛のみほとけ
「仏像は動物などの形にインスピレーションを受けて製作されたものではないか」
私がこう考えるようになったのは、興福寺の阿修羅像を拝観したことがきっかけだった。
興福寺の八部衆像のうち5体のみほとけに動物のイメージがある。
五部浄像(ごぶじょうぞう)は像の冠をかぶっている。
沙羯羅像(さからぞう)は頭に蛇を巻いている。
乾闥婆像(けんだつばぞう)は獅子の冠をかぶっている。
迦楼羅像(かるらぞう)は頭が鳥で体が人間。
畢婆迦羅像(ひばからぞう)はニシキヘビを神格化した神。
興福寺の八部衆の一である阿修羅像もまた、何かの動物をあらわしているのではないかと思ったのだ。
阿修羅像
その美しい顔立ちにうっとりしてしまい、つい見過ごしてしまいそうになるが、美しい顔だちよりももっと特徴的なのはその長い腕ではないだろうか。
腕は長いだけでなく、筋肉がまったくついておらず、昆虫的である。
阿修羅は蜘蛛ではないだろうか。腕は6本だが、脚の2本を足せば8本となって蜘蛛の脚の本数とあう。
私は阿修羅の腕は蜘蛛の脚に似ていると思う。
また腕と脚と合わせて8本であり、蜘蛛の脚と同じ数である。
阿修羅は蜘蛛なのではないか?
↑ リンク先の東大寺三月堂の不空羂索観音の光背を見てほしい。
蜘蛛の巣のようではないだろうか。
阿修羅ほど昆虫的な腕ではないが、腕と脚の合計が8本で蜘蛛の脚の数と同じだ。
また不空羂索観音は手に羂索をもっている。
羂索とは仏教用語では罠の色糸を撚り合わせた縄のことだが、鳥獣をとらえる罠のことでもある。
不空羂索観音がこの羂索をなげると、よりあわせた綱がぱあっとほどけてひろがるのではないだろうか。
それはまさしく土蜘蛛の姿である。
清水寺 六斎念仏 獅子と土蜘蛛
4⃣清水型観音は伊勢海老?
リンク先3枚目に清水寺のご本尊・清水型千手観音の御前立の写真がある。
清水寺のご本尊は秘仏であり、かわりによりもご本尊に似せて作られた御前立が厨子の前に置かれているのだ。
私は公開された秘仏の清水型千手観音を拝観したことがあるが、御前立よりも丸顔であったような記憶がある。
全国に清水寺と称する寺はあり、その多くの寺で清水型観音を祀っている。
特徴は頭上に高くあげられた二臂の長い腕を組んだおすがたである。
↑ これは長野県東筑摩郡山形村の清水寺の紙芝居だが、冒頭に清水型千手観音のイラストが登場する。
友人は京都清水寺の線所観音を拝んで、「これは伊勢海老だ」と言った。
写真のように伊勢海老は長い触覚をもっている。これを千手観音の腕として表現したのではないかというのである。
たしかにそれはありそうである。

清水型千手観音の頭上高く上げられた腕以外の腕は、伊勢海老の胴体から延びる脚のイメージ。
さらに伊勢海老の尻尾は緩やかに裾が広がる観音様の衣のように見える。
5⃣長い腕の十一面観音は猿?
十一面観音は腕が長く作られることが多い。特に奈良・法華寺のものは腕が長く、膝のあたりまである。
像高は1メートルほどで、小ぶりのみほとけである。
これは、猿をイメージして作られた観音様なのではないだろうか。
猿は膝を曲げて立つので腕が長く見える。
大阪天満宮 猿回し
厩猿信仰(猿を厩の守護神とする)はインドから中国を経て日本に伝わったとされるが、中国にはキンシコウという金色の猿がいる。
日本猿も手が長いと思うが、キンシコウはさらに腕が長いように見える。
ニホンサルの体長は83 cm、キンシコウの体長は65cmほどで、像高1mほどの小振りの法華寺・十一面観音像のイメージにあう。
6⃣伎芸天は迦楼羅?
日本に現存する伎芸天は秋篠寺のものだけである。
美しいみほとけは数多くあるが、秋篠寺の伎芸天ほど優しそうな表情のみほとけは他にはないと思う。
掘辰雄さんはこの像を『東洋のミューズ』と称讃された。
ミューズとはギリシャ神話に登場する音楽・舞踏・学術・文芸などを司る女神である。
しかし私はこの美しい伎芸天を見て、迦楼羅(かるら)だ!と思ってしまった。
2:39あたりの技芸天の耳の上向かって左あたりを見てほしい。
三面宝冠をつけているとのことだが、宝飾の真ん中あたりに小さな二重の円がある。
次に迦楼羅の伎楽面を見てみよう。
恐ろしい顔をしていて伎芸天にはちっとも似ていないが、耳に伎芸天と同じような二重の円がある。
私は伎芸天と迦楼羅のこの二重の円は鳥の耳を表したものではないかと考えている。
鳥の耳は羽毛で隠れていてわかり難いが、小さな穴があいている。
迦楼羅は鶏冠とくちばしを持ち、鳥を神格化した神である。
そして伎芸天は器楽の技芸に秀でた神・・・ということは音楽の神なので、やはり鳥を神格化した神とも考えられる。
7⃣葛井寺・千手千眼観音は孔雀?
大阪府藤井寺市の葛井寺のご本尊・千手千眼観音の脇手は
持物をもつ大手38本は手38本、小手1001本(右500本、左501本)を持つ迫力ある観音様で、
脇手には墨で眼が描かれている。
これは孔雀ではないかと思う。
孔雀の雄は羽根を広げるとたくさんの目があるように見える。
ギリシャ神話に全身に100の目を持つアルゴスという神が登場するが、アルゴスも孔雀の神であるかもしれない。
8⃣水月観音はクラゲ?
神奈川県鎌倉市・東慶寺には水月観音という超美形の観音さまがおられる。
クラゲの漢字表記は「海月」「水母」「水月」である。
水月とは、ずばりクラゲのことなのである。
崩れた三角形の形はクラゲを思わせる。
スポンサーサイト