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トンデモもののけ辞典㊷ 赤えい



竹原春泉画『絵本百物語』のうち、三巻の六丁 「赤ゑいの魚」。

竹原春泉画『絵本百物語』のうち、三巻の六丁 「赤ゑいの魚」。

①赤えい

赤えい(あかえい)は、江戸時代後期の奇談集『絵本百物語』(天保12年(1841年)刊)に見える巨大魚。原典には「赤ゑいの魚(あかえいのうお)」の名で記載されている。

概要
安房国(現在の千葉県南端)の野島崎から出航した舟が、大風で遭難して海を漂っていたところ、島が近くに見えてきた。
これで助かったと安堵した船乗りたちは舟を寄せ、上陸した。
ところが、どこを探しても人がおらず、それどころか見渡せば、岩の上には見慣れない草木が茂り、その梢には藻がかかっている。
あちこちの岩の隙間には魚が棲んでいる。
2、3里(およそ10キロメートル前後)歩いたが人も家も一向に見つけることができず、せめて水たまりで渇きを癒そうとしたものの、どの水たまりも海水で飲めはしなかった。
結局、助けを求めるのは諦めて船へ戻り、島を離れたところ、今までそこにあった島は海へ沈んでしまったという。
実はこれが、海面へ浮上した赤えいであったとのことである。


改行は筆者が適当にいれました。

⓶解説文

『絵本百物語』の挿絵中の解説文には、以下のようにある。

この魚その身の丈三里に余れり 背に砂たまれば落さんと海上に浮べり
其時船人島なりと思ひ舟を寄すれば水底に沈めり
 然る時は浪荒くして船これがために破らる 大海に多し

現代語訳は以下の通り。
この魚は体長3里(約12キロメートル)を上回る。
背に砂が溜まれば、砂を払い落とそうと時おり海上に現れる。
人がもしこれを島と見誤って船を近づけようものなら、船は水底に沈められ荒波によって壊されてしまい、乗員も船もろとも渦に呑み込まれてしまう。
この怪異は大海に多い。


また、国書刊行会『竹原春泉 絵本百物語 -桃山人夜話-』にて類話とされているものに説話「赤えいの京」があり、その梗概は以下の通りである。
何隻かの漁船が大きな島に上陸したが、あくる日にその半分ほどの船が海へ流されていたので漁師たちは残りの船で島を脱出したところ、そこは南海の未知の国であった。
実は彼らが上陸したのは島ではなく巨大な赤えいの背であり、知らぬ間に遠くの海へ漂流していたという。
実在の魚であるアカエイは総排出腔の形が人間の女性器に似ているため、美女の喩えである傾城(城主を色香で迷わせて城を傾けるほどの美女)に因む「傾城魚」(けいせいぎょ)の別名があるが、この名称から後に、アカエイの中には背に京(城)を乗せているほど巨大なものがおり、そのアカエイは突然海中に沈んで背の城を傾けるといった話が生まれたとする説もある。
また、アカエイと同じトビエイ目のエイであるオニイトマキエイも、大型の個体は全長5メートルから6メートル、全幅10メートル以上におよぶことが知られている。

なお、『絵本百物語』刊行の半世紀程前、天明5年(1785年)成稿の林子平『三国通覧図説』にも
蝦夷国(北海道)の近海に棲息し「背ノ広キコト方六七十丈(およそ200メートル前後四方)」という「鱝魚」の記述があり、その訓には「アカヱイ」と振られてある。


③赤えいは、野島崎や北海道そのものの妖怪?

まず、千葉県野島崎の場所を確認しておこう。

 

野島崎の形は菱形をしていて、なんとなく赤えいににているような気がする。

赤えい2

北海道も菱形をしている。


もしかして、「赤えい」とは野島崎や北海道そのものの妖怪なんてことはないだろうか。

もう一度、妖怪の絵を見てみよう。

竹原春泉画『絵本百物語』のうち、三巻の六丁 「赤ゑいの魚」。

妖怪には画面上のほうに、手のようにも見える突起が描かれている。
しかし、実際「赤えい」にはこのような突起はない。
しかし、野島崎の地図を見ると、南西に「ナラ島」と記された突起のような場所がある。
妖怪の絵に描かれた突起は、この「ナラ島」ではないか?
 

写真を確認すると、さほど高い土地もなさそうで、ますます赤えいのイメージに近づく。

④「赤えい」の伝説は台風被害を描いたものだった。

「赤えい」の正体が野島崎そのものだとすれば、次の記述は台風による水害で、野島崎が水害にあったことを意味していそうである。
「どこを探しても人がおらず」とあるのは、台風による高波で民家も人も壊されて流されてしまったということだろうか。

大風で遭難して海を漂っていたところ、島が近くに見えてきた。
これで助かったと安堵した船乗りたちは舟を寄せ、上陸した。
ところが、どこを探しても人がおらず、それどころか見渡せば、岩の上には見慣れない草木が茂り、その梢には藻がかかっている。
あちこちの岩の隙間には魚が棲んでいる。
2、3里(およそ10キロメートル前後)歩いたが人も家も一向に見つけることができず、せめて水たまりで渇きを癒そうとしたものの、どの水たまりも海水で飲めはしなかった。
結局、助けを求めるのは諦めて船へ戻り、島を離れたところ、今までそこにあった島は海へ沈んでしまったという。

⑤傾城魚

実在の魚であるアカエイは総排出腔の形が人間の女性器に似ているため、美女の喩えである傾城(城主を色香で迷わせて城を傾けるほどの美女)に因む「傾城魚」(けいせいぎょ)の別名があるが、この名称から後に、アカエイの中には背に京(城)を乗せているほど巨大なものがおり、そのアカエイは突然海中に沈んで背の城を傾けるといった話が生まれたとする説もある。

この文章に記されている総排出腔とは直腸・排尿口・生殖口を兼ねる器官のことで、多くの軟骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類や哺乳類の一部はこの総排出腔をもっている。

赤えい

上の写真はエイを腹側からみたものである。
上部の目のように見える二つの穴は鼻、その下にある穴は口である。
口の下、左右に縦に5つ並んでいるのは、鰓(エラ)の穴だ。
一番下にあるのが総排出腔。

妖怪・赤エイのほか、宮古島の伝説には、エイと契る男の伝説などもある。

湧湧川マサリヤという漁師がいました。
ある日漁に出てエイを釣ると、エイは美しい女に変わりました。
マサリヤは女と一夜を共にしましたが、夜が明けると女はいなくなっていました。

数ヶ月後マサリヤが漁をしていると、男の子が海から現れ「お父さんを龍宮にお連れします」と言ってマサリヤを海の中へと誘いました。
龍宮城でエイの女と再会して歓待を受けるマサリヤ。
けれども数日もすると海の暮らしにも飽き飽きして陸へ帰ることにしました。
女は別れ際に酒の入った壺を渡しました。

陸では3年の月日がたっていました。マサリヤがもらった壺の中の酒を飲んでみると、甘露のような美味しさ。壺から尽きることのない美酒は村で飛ぶように売れ、マサリヤは金持ちになりました。

しかしある日マサリヤが「こんな酒はもう飽きた」と言うと、壺は白鳥になって飛んでいき、マサリヤはたちまち老人となってしまいました。


⑥菱形は女陰をあらわす?

しかし、それだけではなく、エイの形が菱形をしていることも関係していそうに思える。
ネットを検索すると雛祭りの菱餅は女陰を、甘酒は精液をあらわしているとする記事ヤカキコミが結構みつかる。
都市伝説だとの意見もあるが、私は菱餅や甘酒にはそういう意味があると思っている。

雛祭りには蛤のお吸い物を食べる習慣があるが、蛤とは女陰の隠語である。

余談となるが、 サンドロ・ボッティチェッリの『ヴィーナスの誕生』にも巨大な貝が描かれている。

サンドロ・ボッティチェッリ「ビーナスの誕生」

サンドロ・ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』

里中満智子さんの漫画「マンガ・ギリシャ神話①」によると、このような筋であるらしい。

ガイア(大地の女神)は自らの力でウラノス(天空の男神)をうみ、
ガイアとウラノスは交わって、多くの神々を産んだ。
ガイアは一つ目の巨人や、頭が50、手が100ある子を産み、ウラノスは彼らを地底に閉じ込めてしまう。
これに怒ったガイアは我が子・クロノスにウラノスの性器を切り落とさせた。
ウラノスの性器は海に落ち、その泡からアフロティーテがうまれた。
アフロディーテは貝にのってキュプロス島へやってきた。

アフロディーテは英語ではヴィーナスという。

つまりヴィーナスは男性器の泡から生まれ、貝=女性器にのってキュプロス島へやってきたわけで、かなりエロい存在なわけである。




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