トンデモもののけ辞典⑲ 野槌
鳥山石燕『今昔画図続百鬼』より「野槌」
①妖怪・野槌
妖怪・野槌は野の精霊、野つ霊(ち)という意味であるといわれる。
特徴は、
❶蛇に似ている。
❷胴が太い。
❸頭部に口があるが、目鼻はない。
❹柄のない槌のような形をしている。
❺深山にすむ。
❻ウサギ、リスを食べる。
⓶野槌は蛭の妖怪?
槌のような形、口だけあって目鼻はないというのは蛭ににている。
ヒル
口周辺と肛門の下側が吸盤になっており、捕食活動にも運動にもこれを用いる。
外見的には感覚器は見えないが、体前方の背面に眼点(光の強弱を感じるセンサーで、電子顕微鏡で見える表面が凹んだ器官)があるものが多い。
ヒルには眼点と呼ばれる目のような機関があるにはあるのですが、電子顕微鏡で見てやっとわかるくらいの小さなものなのだ。
野槌とはヒルの妖怪ではないだろうか。
黄表紙の野槌。恋川春町『妖怪仕内評判記』
↑
もともと野槌とは鳥山石燕が描いたような妖怪であったのが、擬人化されて、このような姿になったのだろうか?
③野上神社と石荒神社は山焼きに関係する神社?
今は禁止している自治体も多いが、古より野焼きという習慣があった。
野焼きをする目的は2つあります。
ひとつは若草の肥料とするため、もうひとつは害虫を焼き払うことである。
若草山山焼き
奈良の若草山山焼きは野焼きのひとつである。
山焼きが行われる若草山の山麓に野上神社と石荒神社がある。
野上神社・石荒神社は春日大社の境外社で、野上神社は草野姫(かやのひめ)を、石荒神社は火産霊(ほむすび)神をお祭りしている。
草の神様と火の神様の組み合わせは、若草山の山焼きをイメージさせる。
野上神社と石荒神社は山焼きに関係する神社ではないかと思う。
④若草山山麓にある野上神社は妖怪・野槌をまつる神社だった?
野上神社の御祭神・草野姫はイザナギ・イザナミの間に生まれた神で、別名を野槌という。
野上神社は蛭のような姿をした妖怪・野槌(草野姫)をまつる神社ではないのだろうか?
⑤野槌(草野姫)は榎本の神?
同名の妖怪・野槌は頭のてっぺんに口があるだけで、目も鼻もない。
野槌には口しかないので耳もなかったと考えられる。
先ほども述べたように、若草山山麓にある野上神社は春日大社の境外社で
春日大社は若草山からすぐ近くにある。
春日大社境内にある榎本神社の神には次のような伝説がある。
榎本の神はタケミカヅチに『土地を三尺譲ってほしい』といわれ、承諾した。
ところがタケミカヅチの言う三尺とは地下三尺という意味だった。
榎本の神は広大な神域をタケミカヅチに奪われた。
榎本の神を祀る祠は春日大社本殿のそばにあるが、榎本の神は耳が遠いので、柱を叩き、祠を回って参拝する習慣がある。
野槌(草野姫)とは、榎本の神のことではないのか?
⑥草野姫(野槌)=榎本明神=蛭子神?
蛭子神は耳が悪いので神殿の後ろを叩いてお参りする。
野槌・・・・・耳がない≓耳が悪い
榎本明神・・・耳が悪い。
蛭子神・・・・耳が悪い。
三神は同一神ではないだろうか。
草野姫(野槌)=榎本明神=蛭子神?
蛭子は「えびす」とも「ひるこ」とも読まれる。
蛭子という神名は、蛭子が3歳にたっても立つことができず、蛭(ひる)のように骨のない体であったというところからくる。
そしてどうやら野槌とは蛭の妖怪であるらしい?
このように考えていくと、若草山山焼きは
草野姫(野槌)=榎本明神=蛭子神を焼き払うという意味あいがあったように思われる。
スポンサーサイト