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人形の涙⑦ 人麿神社 『首が抜ける人麻呂像』

人形の涙⑥ 當麻寺 二十五菩薩練り供養 『死者に穢れを持っていってもらう行事』  よりつづく~


高取土佐町 雛祭2

高取土佐町 雛巡り 御殿飾り ※昔の雛人形は首がとれるように作られていた。

私たちは高取土佐町の雛巡り、龍野の人形浄瑠璃、上賀茂神社の夏越神事、下鴨神社の雛流し、淡嶋神社の雛流し、當麻寺・即成院の練り供養と旅を続けてきた。
旅の出発点は雛人形や人形浄瑠璃の首はなぜとれるのか、ということだったが、これまでの旅の中でその答えが浮かびあがってきたように思う。

龍野人形浄瑠璃 

龍野 人形浄瑠璃 
※人形浄瑠璃の人形は綿の入った衣装に頭や手足をさしこんで操る。芝居が終わると衣装から頭(かしら)を抜く。

上賀茂神社の夏越神事で見たものは、息を吹きかけて人形に穢れを移し、川に流すという神事だった。

上賀茂神社 夏越神事

上賀茂神社 夏越神事

下鴨神社や淡島神社の雛流しの中で、もともと雛人形は紙でできており、川や海に流す行事であったことを知った。

下鴨神社 ひな流し

下鴨神社 雛流し

下鴨神社 流し雛

下鴨神社 雛流し

淡島神社 雛流し

淡島神社 雛流し


そして當麻寺・即成院の練り供養は、死者にあの世に穢れを持っていってもらう行事であることを学んだ。

當麻のお練り2

當麻寺 練り供養

即成院 二十五菩薩練り供養

即成院 練り供養

人形とは自分の穢れを移して川や海に流す身代わり人形だった。
雛人形ももともとは紙でつくられていて川や海に流していた。
しだいに雛人形は豪華な人形へと変化し、簡単に川や海に流せるものではなくなった。
しかし人形の本質は身代わり人形なので、命をたつ必要がある。
人形の首を抜いて和紙でくるみ押入れの奥にしまいこむというのは、人形の命を絶つ儀式なのではないだろうか。

それを確認するために、今回は人麿神社のすすつけ祭へとやってきた。(現在は行われていません)
人麿神社の御祭神は柿本人麻呂だが、その神像の中には雛人形や人形浄瑠璃と同じく、首の抜けるものがあるのだ。

人麿神社 すすつけ祭2 

人麿神社 すすつけ祭


橿原市地黄町の人麿神社のすすつけ祭は「のぐっつぁん」(野神祭)と呼ばれる風習のひとつである。
「のぐっつぁん」とは5月ごろ、ワラで作ったジャ(蛇)を子供たちが野神塚まで担いで行き、塚に住むといわれる巳さんに参拝し雨乞い・豊作を祈る風習のことである。

すすつけ祭では5月4日の午後、子供たちがは村を回って竃の煤を集め、水と油を加えて墨をつくる。
綿をくるんだりすみつけ棒も作る。
その後、年長の子供が煤つけ役となり、裸になった小さな子供たちを追いかけまわして墨をつける。
子供たちが真っ黒になるほど豊作になるといわれている。

人麿神社 すすつけ祭3 

人麿神社 すすつけ祭

参加した子供たちはは全員当屋(氏神:人麿神社の年当番)の家に泊り、翌5日の早朝4時に野神まいりにでかける。
戻るときには「ノーガミさん送った、ジージもバーバも早よ起きよ!」と大声ではやすそうだ。
子供たちは当屋でお昼を御馳走になり、お小遣いをもらって祭は終了する。

人麿神社の氏子さんたちにとって、野神さんとは人麿神社の御祭神・柿本人麻呂そのものだろう。
子供たちが煤をつけあうのは、柿本人麻呂が万葉時代を代表する歌人なので、人麻呂が筆をとって色紙に歌を書いているところをイメージしたのだろうか。

それもあるかもしれないが、私はこの祭は柿本人麻呂に穢れを移す祭ではないかと思う。
墨をつけられる小さな子供たちは柿本人麻呂役なのではないか。

人麿神社 すすつけ祭 

人麿神社 すすつけ祭

上賀茂神社の夏越神事を思い出してほしい。
それは人形に息をふきかけることで、自らの穢れを人形に移して川に流すというものだった。

これと同じように、地黄町の人々は人麻呂役を演じる子供たちに煤をつけることで、自らの穢れを移しているのではないか。
そして5日の早朝、子供たちは「ノーガミさん送った」と囃すが、野神さん(=柿本人麻呂)をどこに送ったのだろうか。
人々の穢れを背負わされた野神さん(=柿本人麻呂)はあの世に送られたのではないか。
「これで穢れはなくなった。ジージもバーバも早く起きろ、もう安心だ」ということではないだろうか。

煤つけ祭で子供たちが真っ黒になるほど豊作になるといわれるのは、それだけたくさんの穢れを柿本人麻呂があの世に持ち去ってくれると考えられたからだろう。
また子供たちにお小遣いが支払われるのは、穢れ役(人麻呂役)を担ったことに対する報酬だと考えられる。

先ほど柿本人麻呂像の中には首が抜けるものがあることを御紹介したが、柿本人麻呂とは人々の身代わりとなって人々の穢れを自らに負い、あの世にもっていってくれる神であると信仰されていたのではないだろうか。
そして煤つけ祭のような行事を行ったあと、首を抜いて魂をぬくため、首が外れる構造の人麻呂像が作られたのではないだろうか。




人形の涙⑧ 手向山八幡宮 お田植祭 『御田植祭は追儺式を陽に転じた神事だった?』 へつづく~
トップページはこちらです→ 人形の涙① 高取土佐町 町屋の雛めぐり 『雛人形の首はなぜ抜けるのか』 



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04-17(Tue)11:06|人形の涙 |コメント(-) |トラックバック(-)

人形の涙⑥ 當麻寺 二十五菩薩練り供養 『死者に穢れを持っていってもらう行事』

人形の涙⑤ 淡島神社 雛流し 『雛流しと補陀落渡海』  よりつづく~

●死者に穢れを持っていってもらう行事

 當麻のお練り

當麻寺

来迎橋の上を二十五菩薩がゆっくりと渡ってくる。

二十五菩薩練供養は當麻寺に伝わる中将姫伝説を再現したものとされる。

中将姫伝説とは次のようなものである。

藤原豊成と妻・紫の前(品沢親王の娘)には長い間子供ができなかったが、長谷寺の観音に祈願して、中将姫を授かった。
紫の前は中将姫が5歳のときになくなり、豊成は橘諸房の娘の照夜の前を後妻とした。
中将姫は美しく成長し、またさまざまな才能にも秀でていたが、継母の照夜の前は中将姫を嫌いいじめていた。
には折檻されるるなど、いじめられていた。
父の豊成が諸国巡視の旅に出かけると、照夜の前は従者に中将姫の殺害を命じた。
しかし従者は中将姫を殺すにしのびず、雲雀山に置き去りにした。
中将姫は雲雀山に草庵を結び念仏三昧の生活をおくっていたが、1年後、遊猟にやってきた父・豊成と再会して都へ戻った。
29歳のとき、阿弥陀如来をはじめとする二十五菩薩が来迎して中将姫は生きながらにして西方浄土に向かった。


當麻のお練り2

當麻寺

上の写真の先頭は観音菩薩で、手には中将姫の像を持っている。
このあと行列は二上山のふもとにある當麻寺本堂に入堂していく。
二上山は奈良の西にあり、日の没する山だった。
そのふもとにある當麻寺本堂は西方浄土の入り口というわけだろう。

練供養会式は平安時代の僧、恵心僧都源信が比叡山で行ったのがの始まりとされ、同様の行事は奈良の久米寺、大阪の大念仏寺、京都の即成院などでも行われている。

即成院 二十五菩薩練り供養 

即成院

上の写真は京都即成院の練供養会式だが『別冊太陽・梅原猛の世界(平凡社)』に、即成院の二十五菩薩練供養についての記事があり、次のような内容が記されていた。
 
①『迎講』は死者をあの世に届ける儀式であると同時に、この世の人が再生する儀式でもあった。
②お練りに参加した人はこの日生まれ清まるという信仰があった。
 
なぜ死者をあの世に届けるとこの世の人が再生するのだろうか。
それは死者がこの世の穢れをあの世に持ち去ってくれると考えられていたからではないだろうか。

久米寺 二十五菩薩練り供養 
久米寺

當麻寺の練供養では観音菩薩が手にした中将姫の像に、自分の穢れを持っていってもらうということになる。
二十五菩薩が渡っていくのを手を合わせて拝んでおられる方がいた。
それは、中将姫に死んでもらい、自分の穢れを押し付け、中将姫があの世へ向かう様子に「ありがたや、ありがたや」と手を合わせて拝んでいるの図ではないのか。
もちろん、拝む人にそんな気持ちはないと思う。
しかし形式はそうなってはいないだろうか。

大念仏寺 練り供養 

大念仏寺


人形の涙⑦ 人麿神社 『首が抜ける人麻呂像』 へつづく~
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